日光東照候群

 ある男が日光東照宮に参拝に来ていた。彼は最近の政治家達に失望していた。だからこそ250年の治世を開いた徳川家康にお参りをしに来たのだ。

「どうかあなた様のような政治家が現れますように。」


 その晩、男の夢の中に大御所が現れて言った。

「なかなか得心な奴だ。お前に将軍家に伝わる力、日光東症候群を授けてやろう。」

「ありがとうございます。しかし名前からして病気ではございませんか。」

「安心しろ病と言っても日々の心がけのようなもの。是非今度の選挙に出馬してみると良い。」


 選挙に出た男は無名の新人との前評判だったが、選挙ポスターに写った彼の顔は、まるで歴戦の古狸。

 対立候補は次々と病死かスキャンダルで失脚し、あれよあれよといつの間にか国のトップまで上り詰めてしまった。

 そして総理大臣になった彼が掲げた目標は

「都合の悪いことは、見ざる、聞かざる、言わざる。」

 男の政権は末永く続いた。

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