橋の下で
家に帰ると父が壊れたラジオを直していた。
「それもうボロボロじゃん。新しいの買えば。」
父はドライバー片手に、部品をいじる。
「まだまだ部品を替えれば動くんだから大事に使わないと。おっ直ったぞ。」
ピッザッザッー
《「お前が20歳になったら告白しようと決めていたんだが、実はお前は私達の本当の子供じゃないんだ。」
「お父さん、私も薄々気づいてたの、でもそんなことどうだっていい。私達家族じゃない。」》
どうやらラジオは直してくれたことに感動でもしたのか、心暖まる家族ドラマを受信したみたいだ。
それを聞いていてふと、一つの疑問が心に思い浮かんだ。
「そういえば俺って、お父さんの子供なの?」
俺がそう言うと、ラジオが動いて上機嫌だった父がいきなり真面目な顔をして
「ちょっと、そこに座りなさい。母さんを呼んでくるから。」
なんて言い始めた。
(父さんがあんなに真剣な顔をするのを見たのは初めてのような気がする。いや、そういえば以前もどこかで見たような。何時だっけな。)
そう考えていると、父が母を連れて戻ってきた。
「父さんな、いつかは言わないといけないと思って隠していたんだが、実はお前は、本当はうちの子供じゃないんだ。」
予想通りで予想外の発言に自分は、戸惑いながらも聞き返す。
「いや、じゃあどうやって生まれたんだよ。」
そうすると父は一言、
「橋の下で拾ったんだよ。」
まるでわけが分からず、側に立っていた母に助けを求めるように目を向けたが、
「そうよ。」
と神妙な顔で父に同意し、期待を裏切られる。
だめだ、ショックで頭がくらくらしてくる。視界がぼやけ、記憶の片隅で聞き馴れた声が頭に響く。
《ストレスチノイジョウヲカクニン。セイシンアンテイブッシツヲトウヨスルタメイチジテキニシャットダウンシマス》
「ほら、まだこの子には早かったのよ」
「そうは言ったって、何時かは言わないといけないし、今回はいけると思ったんだかなあ。」
「前もそう言って駄目だったじゃないの。この子は繊細なんだから。もうちょっと精神面を改良した方がいいんじゃないの。」
倒れた息子の前で両親が話し合う。
「じゃあ、行ってくるから。」
そういって父親はトラックに乗って郊外に向かった。
「いいのがあるといいけど。」
目的地は山間の川。橋の下に隠すようにして不法投棄された家電製品の山の中から、息子にあうパーツを探す。
気が付くと朝だった。いつの間にか寝てたみたいだ。なんだか、 頭はスッキリし、いつもより体の調子も良い気がする。
リビングでは珍しく父が掃除をしていた。
「あれ、掃除機買い換えたの?」
「ああ、これは昨日拾ったんだよ。まだ動くんだから、大事にしないとな。」
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