そして君は眠る

来葉 紀

盲目の少年

もう一度君に会いたい。

そう思った。


赤色がどんなものか教えてくれた君。

体が暖かく感じたあの感覚が赤だったと知ることが出来た。

青色を必死に考えながら教えてくれた君。

つるつるとした花瓶の中の冷たい感触が青だと知ることが出来た。

黄色を教えてくれた。

甘いような渋いようなそんな香りを持つ柔らかな花弁が柔らかく包む黄色だと知った。


全部君が教えてくれたものだ。


太陽は直接見ると世界を一瞬白くするんだと、どこか自慢げに話していた君の声が僕にとって赤色だった。


僕の頬に触れた冷たい手が震えていたね。

握りしめたら、悲しい音がしたんだ。

それが僕にとって青色だったんだ。


君の大きな笑い声。

笑って誤魔化そうとする君に茶化さないでくれと言ったことが沢山あった。

その度、君は必死に伝えてくる君の言葉が僕の黄色だった。


僕の夢は君の顔を、目を見て話すことだったんだよ?

君の髪の色は何色か、目の色はどんな色なのか。

優しい顔をしているのだろうか。

それとも怖い顔をしているだろうか?

怖い顔だったとしても僕は君を怖がることは無いから安心してね。

君が優しい人だって事は僕の耳が知っているから。

君と目を合わせて、君と話したかったんだ。

普通の人みたいに、笑いあって喧嘩したり泣いたり遊んだり一緒に居たかったんだ。


「待ってるから、頑張ってこいよ」


その言葉があったから僕は怖がらなかった。

恐怖より君の言葉を信じたかったから。


君が言ったとおりだったよ。

世界はこんなにいろいろな色で溢れていたんだね。

太陽はこんなに眩しいものなんだね。

直接見てみたんだ。

そうしたら、鼻がむずむずしてくしゃみが出たんだ。

鼻の先がヒリヒリと痛かったけれど嬉しかった。

ずっと一緒にいた花瓶は細長で黄色を薄くした色だったんだね。

これは君が話してくれたあの美味しいプリンの色なのかな。


…僕はここに居るよ?

ちゃんと世界を見れるようになったよ?

なのにどうして君はどこにもいないの?

いろいろな人と話したけど、君はいなかった。

どこにもいなかったよ?


待っててくれるって言ったじゃないか。

どこで待ってるの?

そこは僕が行ける場所?

世界の中?


世界で一番、僕は君に会いたいよ。

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