生命の最終幻想(お題:官能的な幻想)

とろとろとした滑らかな眠りの中に、女神の姿はある。

ぼんやりと浮かぶ白いかんばせ。呪いにも似た艶の黒髪。見えない顔に浮かぶしとやかな圧倒的無表情。


女神とは死だ。赤い唇で紫の歌を歌い、白い腕と背中の羽で、地を這う人間を空の向こうへと至らしめる。女神とは死だ。


触れれば消える、揺れ動く水面の月。彼女がひとたび目を開くなら、そこは楽園。永久の世界。

花は開き、そのかんばせを永遠にする。褪せることなく、枯れることなく、芳醇な色香は恒久のものとなる。過ぎ去る全てよ立ち止まれと、悪魔へ告げる望みの様に。


ひとたび目を開けば。その口から甘い音色が紡がれるなら。彼女は願いをかなえるだろう。

永遠を。恒久を。あまねくすべての永久を。

彼女の目は未だ覚めない。隠された死が白の繭を突き破り、薄い被膜の中から濡れた身体で這い出でるときを、薄荷色の羽が乾いて伸びるそのときを、人類はじっと、じっとまっている。


2016-07-10

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