モチ嫌いと地図のゲーム(お題:それいけ雑草)(必須要素:グーグルマップ)

「ここはどこだ」

「雑草に聞いてくれ」

「雑草ってなんだ」

「雑草ったら雑草だ。何かわかんないのはスベリヒユも葛もヘクソ蔓も全部雑草だ」

「そのチョイスはなんなんだ」

アマゾンで買ったVRで、グーグルマップの土地当てゲームをしていた。今いるのは恐らく日本のどこかなのだが、星にも土にも植物の分布にも詳しくないので、どこにいるのか見当もつかない。

いま、機械を通して送られてくる画像は夏の峠道だ。

「見ろ。すごいものを発見した」

「なんだなんだ。何を見つけたんだ」

キリストの受難パッションフラワーだ」

覗き込んだ画面に映っていたのは白地に青の花、トケイソウだった。

「詳しいな」

「当然だろう」

「ってことはこれ、毒があるんだな」

「毒というほどのものでもない、薬理作用が……なんでわかったんだ。詳しくないんだろう」

「お前、有毒植物しか興味ないだろ」

「その言い方には語弊がある。加食性は大事だ。……スベリヒユはうまそうだな」

目の前の男はそう言って唇を拭った。

「何にするんだ」

「煮つけだな。ああ、お浸しっていうんだったか? つまるとこあれだ、煮てしょうゆで味付けするやつ」

「つくし、はきんぴらにするんだったか」

「ああ。でもつくしはあまりお勧めしない。あれにはアルカロイドが入ってる。毒だ」

「アルカロイド……」

「アルカロイドで思い出したがジャガイモの毒は水溶性らしいな。水に晒して毒抜きをすると食べられないこともないらしい」

「えっ、食うの」

「食べるわけなかろう。死にたいのか。いや、死なない自信があるのか、だな。私はだめだ。死ぬかもしれない。たぶん死ぬ」

「そうか」

「なあ、腹減って来ないか」

「今ので? なんか食うか」

「なんか食おう。何があった」

「鏡開きで余った大根スズシロがたくさん。あー、開いてないけど」

ドイツの虚無オーネだな」

「……なに?」

「なんでもないよ。煮て食うか」



ちくわと大根だけのおでんをかっこみ、二人は白い息を吐いた。

「なんかこれ既視感があるな」

「ああ、正月に見た覚えがある」

「モチある?」

「ねえよ、死にたいのか」


2016-07-10

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