神様殺しの協奏曲《コンツェルト》

kotake

第1話

——轟音。

 互いの命を削ごうとする金属の声。

 そして血の匂い。いや、俺の血ではないようだ。

 なぜ目の前にいる片腕の無い少年は怯えた目でこちらを見ている?

 なぜ俺はこの少年に剣先を向けている?

 いつからか俺は人殺しが得意になっているようだった。

 あの日からもうどれだけ時間が経っただろうか。


——俺の人生はあの日を境に狂い始めた。




 二千四十五年、八月十三日、日曜日、午前七時。

 夏真っ只中で今年一番の猛暑らしい。この時期になると流石の蝉も黙ってはいられなかったのだろうか。

 とにかく煩い。

 普段日曜日はもう少し寝ているのだが起きらずにはいられなかった。

 そんな朝早くから蝉に少し苛立ちを覚えていると、俺の部屋のドアの向こう側から妹が何度も俺を呼ぶ声がした。

 妹までが俺の睡眠の邪魔をしていると思うと、苛立ちを抑えきれなくなり、ドア越しに大声で追い払ってみる。しかしドアの前から立ち去ることはなく、妹の俺を呼ぶ声は

「お兄ちゃんー、携帯鳴ってるよー!」

と変わったのだった。

 眠たい目を擦りながらドアを開け、追い払いつつ妹から携帯を貰うとメール四件、不在着信一件。先日、ようやく俺は親からスマホを買ってもらうことができ、新しい玩具を与えられた子供の様な気分で液晶画面を覗いた。不在着信とメールの三件は友達からだった。どうやらカラオケの誘いのようだ。

 残りの一件は....ゲームの広告だろうか。一番上に大きく『新感覚RPG』と書かれてある。その下には、『同時100人対戦の本格RPGが実現!』との説明。

 そして、『今すぐ始めよう』の文字。

 如何にも怪しい。しかしこの頃全然ゲームをしておらず、そんな怪しさを気に止めることはなかった。なんの躊躇もなく始めてみると、武器選択画面に移ったらしい。

『刀』

『槍』

『斧』

『鈍器』

『鞭』

『双剣』

 俺は迷わず刀を選ぶ。去年まで剣道をしてたこともあり、自然と引き寄せられてしまうのだ。そういえば以前、竹刀を両手に持ったら最強になれるのではないかと遊んでいた時もあったが、あの時はなかなか扱いずらかったのを今でも覚えている。

 剣を選び完了を押すと....妹の『悲鳴』が聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る