恋する短編集

@snow_in_the_spring

コンビニは聖夜、恋の始まりに


今日はクリスマス。

それも、恋人たちの喜ぶホワイトクリスマス。


そんな聖なる夜、手を繋ぐ恋人たちを横目に華やかなイルミネーションの中、一人で歩く私は仕事帰りの彼氏なし。


「…寂しい」


ついポツリと零れる。

寂しい寂しい泣きそうだよ。

彼氏の1人や2人、いればなぁ…。



しかしながら、クリスマスは生憎と良い思い出がないのである。



でも、それがあったからこそ今私はここにいて。


私は過去を否定したくない。

綺麗なモノも汚いモノも全て救い上げて、全て受け入れたいのだ。


綺麗事かもしれない、戯言かもしれない。

けれど、それが私の本音なのだ。




「いらっしゃいませー」


こんな日も愛用のコンビニの店員さんは凄く笑顔だ。

なんかもう、吹っ切れてるというか悟りを開いた感じの笑顔に感じられるのはこんな日だからだろうか。


チョコレート菓子とバニラアイス、それから甘いカフェオレ。最後にヨーグルト2つを手に取りレジへ向かう。



「しょ、商品お預かりしますっ!?」


普通にびっくりした。声裏返ってるよ。

入店時の店員さんとは別の、高校生っぽい男の子には胸元に『研修中』の文字が。

緊張しているらしいその態度につい笑ってしまった。


「はい、お願いします」

「っ…!!」


真っ赤になった顔は、なんというか可愛い。うーん、男子高校生に可愛いって失礼なのかな。


「ーーーで、計719円に、なります」


9円て嫌だよね、きっちり払えないし。


千円と20円を出す。

お釣りは…301円、かなぁ。

私の最近のマイブームはレジで表示される前に自分でお釣りの額を計算することだ。

合ってたら心の中で〝よしっ!〟ってするのである。


「えと、お釣りが301円、に、なります」


心の中でガッツポーズをしながらレシートとともに出されたお釣りを受け取る。

小銭たちを財布に仕舞ってレジ袋を受けとーーーーる?


男子高校生(推定)はレジ袋を持ったまま動かない。

顔は下を向いているが耳が赤いのが丸見えだ。


「あの…?」


困り果てて声をかけると、私よりも10センチは高いであろう身体がビクリと揺れた。


少しずつ、顔が上がる。



「か、彼氏!って、いますか!?」



ぽかーーーん。


いつから見ていたのかもう一人の店員さんも私と同じくぽかんとしている。


「か、彼氏?は、いません、けど…」


どうした少年。

そ、そういう年ごろ、なのか…?


「あの!あの!!」

「は、はい!!」




「お、オレと!付き合って下さい!!!」




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