僕らのマズルカ

清水円

第1話 プロローグ

爽やかな風が一面の早苗を揺らす、夏の日。

煌びやかな都会に憧れ、頬を染める体験を待ちわびた少女達が、今日もお喋りに花を咲かす。

「3組の柳瀬やなせくん、またデート誘われたらしいよ~!」

「今度は誰?」

「てか違う子なの?」

「1年の時は全然だったのにねー」

「普通にいい人だけど、別にって感じじゃない?」


まだ人生そんな経ってないけど、まさに青春、人生の春だ。

「僕はー、魔法の薬で女の娘を吸い寄~せるぅ~♪」


すかんちの「恋のマジックポーション」。

漫才コンビ・ダウンタウンが若かりし頃に持っていた冠番組のオープニングでもある曲だ。放送していたのはたしか90年代初め。


ミレニアム以降に生まれた中学生の僕がこんな古い曲を口ずさむ理由は、前触れもなく降ってきた。


「あんたにこの薬をやろう。勉強だけしてたって頭がでっかくなるだけさね。

身体と一緒に心もうんと動かしな。ん?若いの」

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