パルム 3

「はっ!」


気が付けば俺はフィルの背中にいた。どうやら俺は夢をみていたらしい。


「おっ、起きたかァ」


定まらない思考の中、何とか焦点を合わせようと目を細める。教会を燃やしていく炎、精一杯火を消そうと四苦八苦する魂法使いたち。俺の視界に映り込んだのはそんな地獄絵図だった。叫びながら逃げる奴もいれば泣きながら転ぶ奴もいる。そんな中フィルは俺を背負って走っていた。


「ど、どういうことだ?」

「どうやら放火が起きたらしい」


放火?・・・


「いくら消してもなかなか消えなくて困ってるっつうことだァ」


いくつかわからないところもあるが俺はとりあえずうなずいておくことにした。と、そのとき崩れかけていた教会から巨大な塊が降ってきた。


「ちょっとここで待ってろ!」


俺を下ろして向かった先はあの塊のいち、どうやら盾で受け止める気らしい。俺は呆然と見守っていたが数秒後には全身が恐怖にむしばまれることになった。日が広がっていき周りの建物にも移り始めたころ燃え盛る炎の中から姿を見せたのは茶髪の髪に水色のポロシャツ似の服を着た青年・・・パルム。刹那彼は右手を上に向けそれを振り下ろす。町全体を突風が遅い火をかき消した。そして、彼は長い前髪から見える鋭い視線を俺に向けてくる。

「どうしたのブレッド。そんなにおびえて」


その言葉を吐いた彼の目は空の青色ではなく

夕焼けのごとく真っ赤だった。


「うわぁ~、奴は・・・奴は・!」「何だよあいつ!」「あいつが火をつけたんだ。だから、一瞬で火を消したんだ」


パルムが一歩動くたびに飛んでくる悲鳴は恐怖に陥っていた。大慌てで走っていく人々が俺には正しく映った。


「あぁあ、みんな逃げちゃったよ。どうするの?君も逃げる?」


問答無用で後ろに背を向けた。そして走る。


「何なんどよあいつは、あんなの・・・パルムじゃない」


言葉が聞こえたのか、それとも俺を殺す気なのか背後から光を放った球が無数に飛んでくる。俺は足をとめ剣を構えた。そして飛んできた球をひとつづつ切り捨てる。そしてあたりが煙で包まれたところを走った。俺を照らす西日がとてつもなく大きく見えた。

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