パルム 4
差し込む朝日に俺は目が覚めた。昨日の一件以来パルムの姿をした何か?は一度も帰ってきていない。テントの中には俺とパルム、それからイブの寝袋だけが引いてあった。俺は二つのふくらみを無視して町に向かう。今日向かう先はあの燃え尽きた教会。静まり返った町の中を進むのは少し心細かった。だんだんと視界に入ってくるその協会は屋根は焦げステンドグラスは解けて原型を保っていなかった。そんな建物の扉を開ける。そして向かった先は昨日の図書館。ステンドグラスが解けてしまっているため中では静かな風の音が聞こえた。本を取り出し席に着く。と、そのときどこからか声が聞こえてきた。
「ブレッド君。パルム君のことが気になるのかね」
大人の男の人を連想させるその声は円形の空間の中で反響する。
「だっ、誰だ!」
とっさに剣の柄を握った。
「パルム君の秘密が知り知りたいのかね?」
それでもなお問いかけるそいつ。そして、俺の後ろから突風が吹いた。ふと気配を感じ後ろを見る。そこに立っていたのは白衣を身にまとった25歳ほどの男。
「お、お前はいったい誰だ?」
「きこえなかったかい?パルム君の秘密が聞きたいかと聞いているのだが・・・」
俺は慌てて「聞きたい」と答えた。
「そうか・・・しかし、君はいくつかつみを犯しているようだな。人を4人殺した」
衝撃的な発言に全身の毛が逆立つ。
「なぜ知っている」
男は表情一つ変えず俺を無視する。
「しかし、その相手はどれも君に剣を向けた
ものばかりだ。いや、正確に言えば君の仲間に剣を向けたものか。ただの自己犠牲か」
最後の一言に俺は抜刀した。空気を揺らす一撃を打ち込む。しかし、目の前にいたはずの
男はいつの間にか姿を消している。
「落ちつきたまえ、ブレッド君。君は正しい行動をとったと認めよう。だから君に罪を与える気はない」
飛んできた声は天井から届いた。上を見れば男が白衣を揺らし浮いている。背中に腕を組み足を開いたその姿はものすごく知的に感じられた。
「そのかわり・・・君にはパルム君の事件を完全に解決してもらいたい」
「なんでだ。そんなのお前がやればいいことじゃないか」
すると男は目をつぶり深いため息をつく。
「やりたくないならそれでいい。ただ、転生者であるイブさんと君が居場所を失い死亡するだけだ」
全身がこわばるのを感じた。それは一体どういうことなのだろうか。この男はそんなことができるのか。だとしたらいったいなにものなんだ?
「なかなか真意をついているな。そうだ、君の考える通り私にはそれができる。なぜできるかという質問とお前は何者だという質問は受け付けない」
なに。頬を数滴の汗が流れた。この男は今、俺の思考を読んだ。一体どうやって・・・。男は表情を一切変えることなくさらに口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます