日が沈んだ世界 12

 「がっしゃ~ン」盛大な音を上げ家の扉が開かれた。入ってくる空気が壁に掛けられたホープセーバーを揺らす。


「ウォ~。お前らァ!今年もォ、この時期がやってきたぞォ」


唐突に中へ突っ込んできたフィルは何やら右手にチラシを握りしめていた。


「そのチラシは何だ?」

「おっ、これか?これはなぁ~、剣術大会の申込書だァ」


ま、まさかァ、イベント発生かァ。そんなことを俺はこころの中で深く思った。


「へぇ~そんな大会があるのかぁ~。僕は知らなかったなぁ~」

「そりゃ、剣術大会だから魂法使いのパルムは出られないしな」


パルムは肩を落とす。そして、その会話をずっと見ていた少女・・・いや、仮名マナが笑顔をのまま口を開いた。


「フィルさんは出たことあるんでしょ。その大会」


正直恐ろしいことを聞くもんだ。もしもフィルが大会に出たことなかったらある意味で恐怖じゃないか。


「いや、さっきのは冗談だァ。そもそもこの大会、今年が第一回目だしなァ」


やっぱりかぁ~。俺は深いためいきを吐いた。


「じゃ、なんでその大会に出ようと思ったんだ?」


「それがよォ。この大会、一チーム5人でそれぞれの得意武器を木に変えて勝負する大会なんだけどその賞金がまさかのハバネロ討伐隊への加入らしいんだ」


な、なんだと。つまりハバネロに挑む権利を与えられるということか。


「よし。出よう。大会に出て根こそぎ相手を倒してその権利、俺たちがいただいてしまおうじゃないか」

こうして俺たちは剣術大会に出場することになったのだった。





 巨大な部屋の中。俺、フィル、そしてマナは紙の置かれた机を挟んで、白髭の目立つ老人と会話をしていた。


「それでは、ここに名前とチーム名の記入お願いします」


いや、違うか。これは会話ではなく申し込みだ。今日、俺たちは剣術大会に出場申請するためにこの教会にやってきたのだ。


「チーム名かァ。じゃ、ブレッドでおねがいしよう」

「えっ、なんだってよく聞こえなかったんだが・・・」


何かとても重要なことを聞き逃した気がする・・・。


「何でもないわよブレッド。フィルさんは当然弓で出場するのよね」


するとフィルは慣れない感じで苦笑いを浮かべた。ついつい俺も耳を傾けてしまう。


「いやぁ~。じつわ・・・なんか剣と盾はいいらしいが弓はダメらしくてなァ・・・」


なんてことだ。フィルって弓と盾以外に何かつかえたっけ?


「もう本当に困るよなァ。弓禁止じゃ俺、守る以外何もできないんだよなァ」


やっぱりかぁ。別に強いからいいんだがそれはフィルが弓をつかえた時の話だ。盾だけでは攻撃できないから話にならない。


「そうか、じゃあお前は除外でいいな」


俺が無気力に鉛筆をつかむとフィルは慌てて両手を振り「えっ・・・ちょっと待って俺にも考えがあるんだよォ」と騒ぎ始めた。


「そもそも、盾だけで出場する奴なんてあんまりいないだろォ。だからこそ、あえて俺は

盾だけででるんだァ」


場の空気が静まり返った。そしてフィルは汗を一滴垂らす。


「よぉっし、お前ら早く名前記入しろォ」

「なかったことにした」


俺の一言にマナはなぜか口元を抑え込んだからどうしたのかと思えば大笑いして吹き出さないように耐えているではないか。こう見るといがいと整った顔とセミロング髪は俺好み

な用にも感じるのだが・・・いや、いかんいかん。ッつうかなんでこいつ笑ったんだ?そんなに面白かっただろうか。やっぱり俺のギャグセンスに惚れたかぁ。うんそうだなきっとそうだ。俺はどこまでも自分を信じるのであった。

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