石の齟齬

志木冬

石の短編

 学者の実験で、意思を持っている石が発見された。どのようにして発見されたかと言えば、実は最初は実験ではなく、偶然発見されたのだった。

 その学者は言語学者で、普段は自国の国語の、最近の動向の研究をしているが、疲れると散歩に出て、大学の近くにある川原の石を手にもって眺めたり、様々な形や手触りを握って感触を確かめるのがすきだった。

 その学者がいつものように散歩に出て川原で石を握っていると、握っている手に違和感を覚えた。

 学者には、石が振動しているように感じられた。石が独りでに動く訳がないと思った学者は、しかし、この石は生きているのではないかと考えた。そして、知人の生物学者に石の分析をしてもらった。分析結果は以下のようだった。

「この石は生命活動をしておらず、そのような体内組織も見当たらない。しかし、刺激に対して反応を示しているのは明らかであり、赤色の紙と青色の紙を近くに置くと必ず青色の石に擦り寄るから、意思を持っているかのように見える。現段階ではこれが一体なになのかは判断できないが、青く荒んだ死ぬことのない意思物体のようだ」

 これを聞くと言語学者ははっとした、死ぬことのない意思をもつ物体を見て。

「神ではないか」

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