No.98 KAWAI K5000W

96年に発売されたKAWAIを代表する61鍵のワークステーションシンセサイザー。そして86年発売のK3から始まったKシリーズ最終機。

Advanced Additive音源という倍音加算合成方式を採用したシンセで、簡単に言うとエレキオルガンのハーモニックバー(ドローバー)が128個あり、各ADSRのセッティングが可能になっているというもの。倍音加算とは、『自然界の音は全てサイン波の複雑な構成によってできている』考えに基づく物で、様々な音高の倍音を時間変化と共に合成していくことで、一つの音を作り込んでいくという物。一般的な減算方式のシンセとは一線を画し、複雑な音を作り出せる。デジタルならではの方式(とはいえ、エレキオルガンもパイプオルガンも元はこの考えに基づいて作られた楽器である)。

K5000Sにあった加算合成方式の音源に加え、このK5000WはPCM音源も搭載。DTMを意識して独自のバリエーションを含めたGM規格にも対応。オシレーターには加算合成とPCMを両方とも組み合わせて使えるため、より複雑な音が作り出せるシンセと言える。楽器らしいアタック感をPCM音源から使い、余韻や持続音をADD音源から使うというように、Roland D-50のような使い方もできる。

同時発音数は加算合成32音+PCM音源32音の計64音。40trシーケンサーを内蔵。コード進行を入力すれば指定のジャンルでバッキングを生成してくれるAPG(Auto Phrase Generator)機能まで用意されている。K5000Sにあったノブは割愛され、別売のCB-1を付けることで同等の操作が可能となる。

K5000の鍵盤は他の機種とは違いタッチもウェイトがあって弾きやすく、手触りさえピアノを意識したような独特の触感を持っている。KAWAIの力の入れようが分かる機種である。良くも悪くも玄人志向のシンセサイザー。

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