仮想世界にだってあること

弥舞 揺良

1個目 スタートすること

「ゲームの世界に入りたい」


ゲームやってる人なら誰だって思うこと。

自分だってそう。今もそうだった。

あの事件がなかったら・・・


その時はゲームをしていたはずだった。

ネットで少しだけ話題のMMORPG、「ナイトクロス」をやっていたはずだった。

いつものキャラで遊んでいた。

アバター名はサキ。名前通り女性アバターだ。リアルは男だけど。

瞬きをする瞬間だった気がする。

景色が白黒、やがて色がつく頃辺りから自分は気がついた。

その光景は壮大だった。

あの狭くて暗かった部屋とは正反対の場所。

広大で太陽が照らす場所。

だけどその光景は身に覚えがあった。

そう。「ナイトクロス」やっていた時の光景、一番大きな街『マルディア』だった。

「・・・・・」

まずは身の回りを確認した。

手の感覚、足の感覚。身体の感覚は現実と同じだった。

その後すぐにメニュー画面を探した。

ゲーマーならやるだろう。ステータス確認をすることだった。

手を振る。コマンドウィンドウが開いた。

すぐ様ステータスを確認した。

「・・・ん?」

ステータスは変わっていなかった。そう。変わっていなかった。けど違和感があった。恐る恐る身体を確認した。

「嘘だろ・・・」

胸があった。いやそんなにはないけど。視点も少し低い気がする。本当に女になってた。種族も同じ、狐の耳がついた狐族だった。使っていたキャラとほぼ同じだった。

声が聞こえ、周りを見渡してみると、他のプレイヤーが騒然としていた。「なんだよこれ!?」「もしかしてゲームの世界?」などNPCに訴える人までいた。そんな空気が嫌になったのか、この場から逃げるように移動した。

歩いていると、東口のゲートに着いた。この先は戦闘地域になっている。ここからはよく見えないが何かが動いているのがわかった。「魔物モンスター」だ。この世界を脅かす敵。倒さないといけない敵だ。自分のステータスパラメータを思い出す。そしてこの先にある場所を思い出す。

「練習には良いかもな・・・」

そう呟いて自分は『マルディア』の東口ゲートを抜けた。

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