第10話
きょろきょろ。――あ。いた。
蒼佑を探したんだけど。まだ、バスタオルにくるまるようにしていた。
ムリもないよね。私がもし、上半身ハダカでみんなの中に入れ~、言われたら。その場を逃げ出すか、舌でもかみ切って生命を絶ちたくなると思うもん。
(去年までも。辛かったんだろうな)
そう思う。思うことしかできない私自身が、今はかなり悔しかった。
「はーいはい。バディ組んだら、準備体操するよ~」
色気のない(当たり前か)、紺色の水着姿の畑山先生が、ピッと笛を鳴らして声を上げた。蒼佑、まだバスタオル外してないけど……。ものすごく心配になってきた。でもそこは、さすが担任と言うべきなのか。畑山先生が気付いた。ととと、って感じの早足で、蒼佑のところに向かう。蒼佑、みんなの注目を浴びてるけど。きっとこれで、フォローが入ってくれる……。といいな。
なにか、言葉を交わした蒼佑は、安心したような表情になって、見学席に向かった。――そうだよね。先生だもん。事情知ってるんだろうな。
「もっと早くしてくれればいいのに」
小さく、隣にまだいる波がつぶやいた。
「ま、とりあえずは。良かったんじゃないの?」
「そうだけどさあ」
「終わったら。聞いてみようよ」
「ん」
――仕方がない。私も決心して、授業を受けよう。蒼佑だって頑張ったんだ。たとえが違うような気がするけど、この際忘れてしまう。私のテキトー頭は、こんなときに便利かもね。うん。
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