第9話
女子更衣室にて。私は一旦、蒼佑のことを忘れて、いろんな意味で絶望モードに入った。
「はあ~あ」
知れず、ため息が出る。隣のロッカーを開けてる波が、
「どうしたの?」
「いあいあ。ブラ率高くなったなあって、改めて」
「そっちかい」
「だよ」
Tシャツ脱ぐのが、急に恥ずかしくなってきた。この場だと、フロント二重のキャミとか。お子さまを主張してるだけのような気がする。――考えすぎ?
考えすぎ。と、出来の良くない頭が結論を下したので、やっぱりあきらめは早い私は、さささっと水着に着替えた。ちらっと、隣の波を見る。
――無いわ~。
いや、胸があるのが無いわ~、なのね? 回りくどく考えつつ、自らの水着姿を、見られる範囲で見てみる。
――無いわ~。これは無いわ~。
ぺったんこ。くびれてない。オマケとしておしりちっちゃい。もっかいため息が出る。
(蒼佑も。いつかはきっと、女の子の身体になりたいんだよね?)
乏しい知識で問いかけ。だろうなあ、たぶんだけどね。
更衣室ではなんにも答えが出せそうにないので。せめて授業には遅れないようにと、今日もまた波に引っ張られるように、プールサイドへ急いだ。そう。今は私のことなんかじゃなくて、蒼佑のことだよ、うん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます