アニメの話

梯子田ころ

アニメの話

君は、いつもそうだったよね。

今日もそうだ。

君はいつでも笑ってくれる。

僕が求めたとき、それは君が笑顔になってくれるとき。

キュートでチャーミング、これが君の証。

たとえどんなに会えない日が続いても、再び会えれば君は笑ってくれる。



君と僕が出会えたのは、約3年前。

ちょうど、僕は失恋して、僕は誰かに慰めてもらうことを求めていた。

確かなる奇跡。

僕の心の喪失感は、君をみて一瞬で消えちゃった。

これが一目惚れ。

僕のそんな気持ちを、いつも笑って迎え入れてくれたよね。

そして、その輝かしい笑顔で僕を見るんだ。

心奪われたし、きっとそう。

君を見て、あぁ、この人なんだって。

昔オバサンの先生から聞いた、「運命の人は初対面でわかる」って言葉、本当だったんだ、って気づいたんだ。

君もきっとそうだよね?



でも、そんなわけがない。

君はみんなのモノ。・・・みんなが大好き、みんなのアイドル・・・。



それでも僕は気持ちを伝えたい。

伝わるのかな?

いっぱい言葉をおくる。

最近じゃ、褒めちぎるのもなんだか嫌になって、少し意地の悪い言葉も書いてみる。

すると、わけのわからない人が僕を攻撃する。

あぁ、一瞬でいい。一瞬でいいから、僕の言葉に気がついて。

僕のことを、少しでもイイから知って。

そんな願いは届かない。

かなわぬ、小さく浅い夢。



僕は君のグッズを色々買ったよ。

最初はイヤだった。

なんだかオタクっぽいから。

テレビで映るオタクの人たちは、グッズを大量に買い込んで、それを奉納とかって呼んでる。

馬鹿げてる、そう思ってた。

でも、やっとわかった気がする。

最後の意地として、絶対にそれを奉納なんて呼ばないけど。

でもいい。

初めて君のグッズを買ったとき、僕はちょっぴり興奮してた。

なんだか、「イケナイ事」をしている気持ちだった。

これでオタクの仲間入りなんだって。もう僕は落ちぶれたんだって。

テンション上がった僕は、また君をみた、やっぱり笑ってた。

一歩踏み込むと、どんどんハマってく。

あれも欲しい、これも欲しい。

やっぱり買うなら人より多い方が良い。

そうだ、外食は我慢しよう。

そうだ、これは節約しよう。

そうだ、電気をつけるのをやめよう。

君の物で溢れていたい。

君をそばで感じていたい。

・・・そうでありたかった。



君との別れは唐突にやってきた。

それはかなり現実的な形。

カードの請求書。

僕は真っ青だった。

あんなに我慢した。給料だって今は8割近くが君のために使ってる。

え?こんなに買ってたっけ?

僕は部屋を見渡してみる。

君の物でいっぱい。

君でいっぱい。

あぁ、そうだ。僕はこんなに買ってたんだ。

少し馬鹿だったな。

そんなことを思って、崩れ落ちた。

馬鹿だった・・・。馬鹿なんだ・・・。

なんでこんな物、買っちゃったんだろう?なんで、こんなにたくさん買っちゃったんだろう?

彼女をみてみた、

やっぱり、笑ってた。

彼女はみんなの欲望を満たす、みんなのアイドル。

男の欲望を形にした、男達のアイドル・・・。



カードはなんとかなった。

でも、やっぱり彼女とは決別しなくちゃいけなかった。

サヨナラ。

君はいつまでも、君のままでいて。

彼女を見てみた、やっぱり笑ってた。



僕はそっとパソコンの、データを削除していく。

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