亜人社会の半魔生活

もはぬる

プロローグ

奴隷生活

鞭を打つ音、それに続く悲鳴

飛び散る鮮血は大地を赤く染め上げる

続く鞭の音、しかし、悲鳴は続かない


「なぁんのつもりだねぇ!奴隷ナンバー2016008457……略して、バカチンがぁ」

「そこら辺で勘弁して貰えないかな、管理官さんよ」


少し肥えた男の振るう鞭は一人の青年によって止められていた。

受け止めた衝撃で皮膚は裂け、溢れる血は管理官の手まで伝っていく。


「うわわわ!ええい!奴隷ヒトが管理官に楯突くというのか!」

「楯突く……そんな気はない。ただ、奴隷の品質が落ちてきているって他の管理官が言ってたぜ?このままじゃ、此処の奴隷は処分……か、魔堕落フォールダウン行きだ」

「それがどうしたと言うのかね?この私に、何の関係があるというのだねぇ!」


血が管理官の手に伝う前に、鞭を地面に叩き付けた。

周囲の奴隷は生気の無い表情で彼らのやり取りを見つめている……

この間だけは働かなくても済む。彼らが考えているのはそれ一つだ。


「俺たちが処分されてしまったらさ、管理官であるアンタはどうなる?

 アンタも、俺たちと同じ"ヒト"だろ?」

「そんなの、私は、私は……別の、奴隷地の」

「奴隷地の、管理官になれる自信……あるか?」

「んんんん!!!ええい!不愉快だ!さっさと作業に戻れ!」


管理官は不機嫌そうに血で汚れた鞭を拾い、青年の掌から鞭の先端を引っこ抜きつつ、その場を去っていく。

騒動が収まると奴隷たちは再び作業に戻る。無意味な採掘作業に。

青年は大きく息を吐き、鞭を奮われていた友人へと視界を移した。


「よう、フィル。大丈夫だったか?」

「……ユートー!うぇぇえ、怖かったぁぁあ!」

「男の本気泣きかよ!?まて、その鼻水と涙塗れの顔で――あ、あー!?」


かくして青年……ユートは友人であるフィルを救った対価として掌に傷と

そして服にたっぷりと鼻水と涙が染み込まれたのであった。




∞∞∞

まさかのヒトしか、それも男しか登場しないプロローグ……

次回からユート視点での物語が始まります。

女の子も登場しますので良ければ次も見てください。

評価やコメントがあると励みになり速筆化します。

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