龍と神のハイブリット・ゾーン
@Arilu
第1話
今の地球は3種族の別れて激しい戦争を行っている。
フランス・モンサンミッシェルを本拠地として、東はロシアは西はポルトガルまで領土を持つ龍族。
エジプト・カイロを本拠地としてアフリカ大陸アジア全土を領土を持つ神族。
アメリカ・ワシントンを本拠地として中南米を領土を持つ人族。
特に龍族と神族の戦いは凄まじかった。アフリカ大陸全土は砂漠化し、アジアの熱帯雨林も半分近く砂漠化してしまった。
そんな戦争の中で、禁断の子供が龍の地で産まれてしまった。
父は、龍族の王バハムートと旧知の仲であり、英雄と称されているヴリトラ。
母は、治療の神として神族で幾千万の命を助けたアンキディア。
2人の間に産まれてしまった禁断の子。名前をヴリティアと呼ぶ。
英雄の子と聞いて、勇猛な男の子をイメージしがちだが、それは違う。
顔立ちは男と言わない限り必ず女の子と間違えられてしまう。肩まで伸びたサラッとした黒髪と優しい目をした赤目。
彼の誕生が世界を戦争から救い平和な世の中を手に入れる立役者となるか、はたまた世界終末の日ラグナレクを早める破滅者となるか、それは誰にも分からなかった。
イタリアはシエーナ。ぶどうの名産地でワインが名産として有名なこの地に龍族と神族のハイブリット・ゾーンとして産まれた禁断の子、ヴリティアは住んでいる。
出身地はドイツのミュンヘンだが、過激な差別のせいで地方へと引っ越しを重ねていくうちにイタリアに住み着いたがヴリティアに対する酷い仕打ちは変わらなかった。
龍族と神族は背中に対象2つの翼を持つが、ヴリティアは右翼は父親ヴリトラを継いだ漆黒の翼をしているが左翼は、母親アンキディアほ翼をしており神々しく輝いている。これだけでも差別を受ける。
そしてヴリティアは今、3人の地元に住んでいる龍から暴力を振るわれている真っ最中だった。
容赦の無い蹴りがヴリティアの腹部に飛んでくる。強い衝撃が襲い地面へと倒れる。その際にコンクリートの床と肌が擦れ滲んだ血出てくる。
「もうやめてよ! 僕が君達に何をしたっていうんだ!」
ヴリティアの言った事は正論だった。産まれて15年間暴力や、暴言などという行為を一度もやったことは無い。むしろ毎日暴力を受けているのはヴリティアである。
「黙れよ、純血ではない龍族であるお前が俺達に歯向かってんじゃねぇよ!!」
倒れているヴリティアに容赦のない蹴りが飛んでくる。抵抗できる力も体力も残ってないただ、終わるのをずっと我慢している。
「見ろよ、この左右非対称の翼を。片方は神の翼って汚らわしい、使えないようにしてやろうか!?」
逆関節と同じ原理で曲がってはいけない方向に力づくで曲げようとする。翼は龍の最大の急所でもあり比べ物にならない激痛が一気に襲い掛かった。
「がっ……あぁぁぁぁぁぁ!!!?」
その苦痛の叫び声は、遠く響き渡り今度は不規則に複数の足音が近づいてくる。
「やっべ……おい、逃げるぞ!」
男3人は路地裏へと消えていく。その数秒後に見回りの龍がやってきて傷だらけのヴリティアにライトを当てる。
「なんだまたこいつかよ。おーい! 戻っていいぞ! いつものガキだ」
見回りの龍もヴリティアを見て無視をする。
「帰ろう……」
動くたびに蹴られた箇所が酷く痛む。特に腹部からの痛みが強いために片手で摩りながら壁に寄り添うように家へと目指した。
「ただいま……」
聞こえるかどうか分からない小さな声だが、奥から慌ただしい足音が近づいてくる。
「ヴリティア! おかえり」
迎えに来たのは、母親である神族のアンキディアだ。その迎えに来た勢いのままヴリティアを優しく抱き締める。その途端アンキディアからエメラルドグリーンに似た光がヴリティアを包み込むと傷だらけの体はすぐに治った。
「お母さん……。僕、やっぱり無理だよ。どこにいたって標的にされるよ」
「ヴリティア……ごめんね、私が龍じゃないからこんな目に」
ヴリティアは心が締め付けられている。母親には絶対に謝って欲しくは無かったからだ。悪いのは自分と思っているため優しい愛を注ぎながら育ててくれた母親には、感謝の気持ちしか無かった。
「ううん、お母さんは悪く無いよ。僕がひ弱だからいけないんだ」
「もう一回お父さんに聞いてみよ。さぁ、リビングに行くよ」
先に歩く母親の背中を追いかけてリビングへと入る。扉を開けた途端に食欲をそそる匂いが鼻腔を埋め尽くすが、まだ夕飯とは言えない時間である。
ヴリティアは特等席であるソファーの真ん中の座席に座り自分が愛してやまない本を読み始めた。その読んでいた本から1つ気になった文章が出てきて、無意識に呟いていた。
「才能を持つ者と落ちこぼれがいる人数は比例していない。才能を持つ者は自らの力に溺愛して折角の才能を無駄しするだろう。そして、落ちこぼれは自らの運命と錯覚して自虐的になり秘めたる力を捨てる。しかし、落ちこぼれが底力を発揮すれば才能を持つ者よりも力を手に入れる……この世に不平等なんて存在しない」
「ヴリティア? どうしたの?」
また、不思議そうな顔で見つめなが近づいくる。
「あ……な、何でもないよ。それよりそろそろお父さんが帰ってくる時間じゃないの?」
「ええ、そうねってちょうど帰って来たみたいよ」
アンキディアの言葉は的確だった。その数秒後には玄関の扉が開く。ヴリティアと2人で迎えに向かう。
「おかえりお父さん」
「おう、ただいま」
「そろそろご飯出来るからちょっと待ってて」
「はい分かった」
いつもは手ぶらだが、今日は少し大きめの紙袋が持っていたためにヴリティアがそれを持つ。
「いけるか? ヴリティアからしたら重いと思うが」
「大丈夫だよ、もう僕は15だよ。こんくらいどうってこと……」
片手で持とうとしたが、ビクともしなかったために両手でなんとか持ち運び絨毯の下において、袋越しだがじっと見続けた。
「ところでこんなに重いと何が入っているか気になるな」
「見たいなら見ていい」
「じゃー、そうするよ」
高鳴る胸の鼓動を抑えつつ紙袋を覗くと、そこには分厚い本が沢山入っていた。
「うわぁ……凄い! ってお父さんこれ前に僕が欲しいって言ってた本だよね!?」
「おう、ババムートの部屋にあったからパクって来た」
「それって大丈夫……なの?」
心配をするのをよそにテーブルには既に夕飯が並べられていたために颯爽と責任座る。ヴリティアはため息が出そうになるが、本を一度抱きしめてから紙袋に戻して椅子に座る。
決まりの言葉と共に夕飯を食べていく。
「ねぇ、ヴリトラここも時間だと思うの」
アンキディアは、今日起きたヴリティアの要件をそっと提示する。いつもなら呻いて考えるところだが何故かその言葉を待っていたと胸を張っていた。
「引っ越しをする必要はもう無い。俺はヴリティアにはある場所に行ってもらう」
「ある場所? それってどこなの?」
ヴリトラは無駄に間を置いて時間を掛ける。アンキディアとヴリティアは唾をゴクリと飲み込み返事を待っている。
「ヴリティアにはミラノにある龍学校に入学することとなった」
簡潔に出てきた言葉に2人はただ呆然としてしまい返事を忘れてしまう。
決まったと思ったのか、ヴリトラは満足した表情をするが返事が帰ってこないためにもう一度言うとお互い目を合わせた後に声を上げた。
「な、何を言ってるのヴリトラ!? 正気なの!? 学校って、ええ!?」
「もちろん正気さ、それにヴリティアにはもっと広い世界を見て欲しい。それと身の安全なら心配しなくていい。ほらこれを読め」
ヴリトラは懐から一通の手紙をヴリティアに渡す。宛先を見た瞬間に再び声を上げた。
「お父さんなんでババムート様直々に僕宛に手紙が来てるの!?」
「内容を見れば分かる。彼奴もお前の事を期待しているからな」
封筒から手紙を取り出して、ヴリティアは声に出してゆっくりと内容を話した。
龍と神のハイブリット・ゾーン @Arilu
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