目を覚ますと異世界でした。

1。 『目を開けば。』














目を開けると、一面の青と白銀だった。


唐突に何を言っているのかと思われただろうが、正直自分でも理解出来てない。


耳元でゴゥゴゥと風のうるさい音がして、布団の中に居た筈なのにかなり寒くて、思わず目を開けてみたら、その光景が広がっていたんだ。


上を見上げてみれば、遠くまで続く白銀。寒いのでこの白は多分雪だろう。 雪が積もって白くなっている逆さの木が見える。

下を向けば、雲がチラホラと浮かんだ真っ青な空。 突き抜けそうな青さを誇っている。


上を見上げた時に被っていたパーカーのフードが外れ、顔に直接冷たい風が当たり続ける。


再び上を見上げれば、どんどん近付いてくる白。



「……………………なんでさァーーーッ?!!!」



思わず絶叫したが風の音でかき消された。



「てか痛い!めっちゃ痛い!?」



寒過ぎて風の当たる顔が痛い。 慌ててフードを被り直すも、全身が寒いのに変わりは無い。


元々極端な気温は苦手で、冬寝る時はストーブをガンガン焚いて毛布を何枚も被っていた自分だ。

いきなりコートやブーツも無しで、寒空の下に…しかも元居た所より明らかに寒い場所に放り出されれば、寒さでパニックになるに決まってる。 その上、空から落ちてるとなれば…言わずもがなだろう。



「痛い!寒い!イタい!何これ⁉︎ハァッ?!!」



混乱しながらパーカーのチャックを口元まで上げ、ブカブカの袖を伸ばして握り込み、身体を丸めてフードを引っ張り縮こまる。


その間もドンドンと地面に近付いているんだが、その事を考える余裕が無い。



「もう無理死ぬ!マジ死ぬ!なんでさ⁈」



混乱し過ぎて何も出来ないまま、真っ直ぐ地面に向かって行って…………………



「あぁもう訳わからんけど誰か助けてくださいッッ!!!!!」



誰も聴いてないだろうが思わずそう叫び助けを求めた。


すると。





「……………****?」

「………ふぇ?」



気付くと風の音が無くなり、細身だがしっかりした腕に抱きとめられていた。


腕の持ち主を見ると、キラキラした王子様フェイスの外人さんが目に入り、更にファンタジーで登場人物が着ていそうなローブが見えた。


ファンタジーな格好の外人さんがもう一度話しかけてくる。



「******?*** *****?」

「え?え?」



話しかけてくるんだが、何を喋ってるのか全くわからん。


英語さえ苦手なのに、聞いたことも無い言語である。 わかるわけが無い。



「え、あ、ぅ…ふぇ……………っ」(じわぁ

「*、****?**** ****?」(焦り



混乱のし過ぎで思考が纏まらず、何がなんだかわからなくなって涙が出てくる。


それを見た外人さんがあわあわして何か聞いてくるも、不思議言語なので理解出来ない。


寒さと混乱でぷるぷると震えながら、フードを押さえて縮こまる。


自分を抱えてあわあわしたまま外人さんが周りを見渡したりしていたが、唐突に何かに気付きローブを脱いで自分に着せてくれた。



「ふぇ……ふゆぅ?」

「**、*** ** *******?」



何かを言いつつ、ローブのフードの上からポムポムと頭を撫でてくれる外人さん。


ローブを纏うと、肌を針に刺されている様な程の寒さだったのが、途端に暖かくなる。

見た目だけでなく効果までファンタジーだ。



「ぅゆ……………??」

「**ー……********…………」



自分を姫抱きしたまま、何かに悩んでいる外人さん。

因みに外人さんのローブの下の服は、如何にもファンタジーで王族が着ていそうな、質の良いちょっとキラキラした服だったよ。



「………**。**** ** ******」

「ぅえっ?」



どうやら決めたらしく、自分を抱えたまま歩き出す。


え、このまま連れてかれんのか。

ローブを着せてくれたとはいえ、完全に良い人かどうかは判断出来ない。

かといって此処に置いてかれても何も出来ずに凍死する自信がある。

でも怖い。 ひと怖い。



「ぅっ、ひぅ、ふゆぅ〜……ッ」(ぷるぷるぷる

「*ッ?!*、** ***!******、*?」(焦り



先程から何かのバロメーターが振り切っているらしく、涙がすぐに出てきた。


それを見た外人さんは、慌てて自分の頭を撫でたり軽く揺すってあやそうとしてくる。



「(グスッ、グスッ)此処どこぉー……………?おうち帰りたぃ……………」(ぷるぷる

「*ー、****、**。*?******。******…」(あわあわ



自分が幼児退行化してる事に気付くも、なんかどーでもよくなる。 おうち帰りたい。

布団に潜ってぬくぬくと惰眠を貪りたい。


自分がぷるぷる震えてると、 外人さんはキョドりながら慌てて走り始めた。



「Neige(ネィジュ)、**!」



走りながら外人さんが何かを呼ぶ。

すると柔らかい鐘の音の様な鳴き声が聞こえ、ザガッ!と雪を散らしながら白い大きな生き物が隣に出てきて並走し始めた。


よく見ると狐の様な姿だが……明らかにデカい。



「Neige、*** **。*******?」

“ くわぁーんっ♪ ”

「**、*****。Neige」



外人さんは、ネィジュと呼んだ生き物を一撫でしてから飛び乗る。


もふもふしたネィジュ?に乗ると、直ぐにスピードを上げて雪の森を駆け抜けてゆく。

樹々の間をスルスルと、危なげなく走る。



「**、*** ****** ***********」



外人さんはまた自分の頭を撫でてくれて、ギュッと抱きしめた後、前を見据える。


自分はどうすればいいのかわからず、唯々困惑したまま抱えられて縮こまっていたのだった。










------------------








暫く経ち森から抜けると、目の前に大きな城が現れた。


そして城の中に堂々と入り、幾つもある扉を通り抜けていく。


絢爛だった内装が、質が良く質素な内装に変わり、落ち着いた雰囲気の調度品がぽつりぽつりと有る廊下を進んでいると、なんか執事さんっぽい人に出会い、外人さんがその執事さんと話を始めた。


最初は執事さんが自分を見て何か言い、それに対して外人さんが返し、それに執事さんが呆れた様子で喋り、溜息を吐く。


その後執事さんが何か言い、此方に手を伸ばしてきたので、思わずビビってその手から遠ざかろうとして、外人さんに身体を押し付ける事になる。



「にゅうっ………」(ぷるぷる

「…………*** *******」(ニヤニヤ

「………*****。」(溜息



助けてくれた人といきなり会った人なら前者を選ぶよね。

そんな事を考えつつ、ビクビクしながらフードを引っ張って小さく縮こまる。


てかマジでこのファンタジーどこ。 夢じゃないよね? おうち帰りたい。



「おうち帰りたい…仕事見つからなくて母さんが煩いけどおうち帰りたぃー………」(ぷるぷる

「……**** オォチカェリタィ ** ******、****** ****」

「**……**** *** **********」



自分の頭の上で交わされる不思議言語を聞き流しつつ、ぷるぷる震えていると、話が終わったらしい。

執事さんが、頭を下げてスタスタスタと去って行く。


それに合わせて外人さんも再び歩き始めた。


廊下の奥の方まで歩いて行き、突き当たりにある扉を開けて中に入る。


そこはどうやら、寝室の様だ。 全体的に落ち着いた雰囲気の内装で、大きなベッドと小さめのテーブルセットに、フカフカのソファが置いてある。


外人さんは自分をベッドの上におろし、何かを言いながらローブを脱がせ始めた。


まぁ、ローブは外で着る物だしね。

そう思いつつおとなしく脱がされたのだが…………



「……………に゛ィッ?!!」



クッソ寒ィ!!!!?


あまりにも寒過ぎたので、ローブを奪取し再び被る。

体に巻きつける様にして着てフードを被ると、寒いのが丁度いい体感温度になった。



「ぅに………(はふぅ……)」(ふるふる

「…………********…………?」(苦笑



外人さんは苦笑しつつ何かを呟く。

その後部屋を見渡し、暖炉に近付いて覗き込んだ。



「****………**。*****」



薪を二・三本投げ込み、手を横に振る。

すると…………暖炉にひとりでに火が入った。



「…うっそぉ。正にファンタジー………」(呆然

「………*?*** ****?」(首傾げ



驚いてる自分を不思議な目で見てるので、外人さんにはこれが日常の様だ。


…………やっぱり信じたくないが、どうやら此処は夢ではない限り、異世界らしい。


ちゃんと帰れるのかとか、そもそも自分はどうして此処に居るのかとか頭を悩ませていると、外人さんが何かを話しかけてきた。



「***…**** ****。Namea(ネミア) *****?Na me a。」

「……………………ねみあ?」(首傾げ



ネミアってなにさ。

日本語でおk。


全くわからず首を傾げると、外人さんは再び語りかけてきた。



「*ー*……** Namea *******………***」

「Harness(ヘーネス)。」

「*?****?」

「** chils(チルズ) *** *******………*** *******?」

「***** Namea **********。**、Namea ********* **********」

「*****。**** *******………」



丁度執事さんが入ってきて外人さんと話を始めた。

どうやら自分の事を話しているようだが、殆どわからん。


多分、ネミアってのがわかるか?って聞いてたんだと思うんだが……ネミアがわからんから何を聞いてるかもわからん。


あと、チルズ?って時にこっちを見たからきっと自分を指した言葉なんだろうけど…………三人称代名詞?の筈。

意味はわからんけど。



「Harness、******* **** ***** *****?」

「******* *******ー?」

「** Neige ******?*** *** *********?」

「*、*** *** ***** ****…」(目逸らし

「Har ne ss。」

「**………………」



何やら静かに言い合いをしている二人。

なんかあの狐みたいな生き物の名前が出てきた気がする。


あと、さっきから執事さんが何回もヘーネスって言ってるから、ヘーネスが名前なのかな?

でも明らかに王族っぽいし、敬称なのかね?


んー……わかんないし、身振り手振りで何処まで伝わるか知らないが、試しに聞いてみるか。



「あ、あのー…すみませーん………?」

「*?********?」

「えっと………………」



外人さんがこっちに来て身をかがめ、顔を覗き込んでくる。


近いなと思いつつも、取り敢えずネィジュとかの事を聞いてみる。



「えぇっと………くわぁーん、ネィジュ?で……貴方、ヘーネス?」



ネィジュの方は、鳴き真似をしつつ手を招き猫みたいにして、貴方と言った時は、外人さんを指差して首を傾げてみる。


伝わるかなー?と思ったが、案外伝わるようだ。 執事さんが頷いてる。



「** ** chils、*********?Harness。」(外人さんを見やり

「チルズ、自分?」(自分を指し

「Wiy(ウィー)。Chils *******」

「**** ** chils ** ******。** ****** Harness ******** ****?」



何やら外人さん…ヘーネスさんが執事さんに口を尖らせて文句らしき事を言っている。


文句を言った後、こっちに向かってニコニコしながら語りかけてきた。



「Mia dile chils(ミア ディル チルス)。Namea mia * ** Hyuthjilard(ヒュースジラード)。******?Hyuthjilard、**」

「ひゅーすじらーど?」

「Nu(ヌー)、Nu。Hyuth、ji、lar、d。」

「ヒューす、ジ、らぁ、ド?」

「Nu、Mia dile chils。ji、lar、d。」

「ジラぁド?」

「*ー*…………」(苦笑



どうやらちゃんと言えてないようだ。 言ってるつもりなんだがな……日本人の発音は独特だからな。


ヒュースジラードさんは何とか呼ばせようとしてるが………うん!めんどい!



「ヘーネス!」

「**、**、jilard………」

「ヘーネスッ!!」

「……………**。** *** ***」(苦笑



結局諦めたようだ。 よし。

ジラードさんは苦笑しつつ、自分の頭を撫でてくれる。


あ、そだ。 執事さんも聞いとかないと。

ちょいちょい、とジラードさんの袖を引いて、執事さんを指差し聞いてみる。



「ヘーネス、ヘーネス。執事さん、ネミア?」

「*、****?」

「***********。Namea mia * Pluggias。** *******」

「ぷ、プりゅージャス?」

「**** Ggias(ジャス)。」

「ジャス?」

「Wiy。」

「成程。じゃ、えっと………」



名乗られたんだし、名乗り返さないとだよね……


でもな……


…………………いいや。ハンネ名乗っちゃえ!



「えっと………ネミア、ミア?Hiverlia(イヴェーリア)!」

「Iberlia(イベーリア)?」

「ヌー!Hi、ver、lia!」

「*〜……Lia?」

「ウィー!」(どやっ



やっぱり自分が考えて必死に覚えた発音と微妙に違うので、早速さっき聞いて覚えた「はい」であろうウィーと、「いいえ」であろうヌーを使ってやったぜ!


思わずドヤ顔になってしまった自分を見て、更に苦笑を深めるジラードさん。



「(クスクスッ)***********、Harness?Mirs(ミーズ).Hiverlia **?」

「*** *** *******…………」

「…………ミーズ?」

「Wiy。** Hiyz(ヒーズ).Hiverlia ****。** Harness **、Misr(ミザー).Hyuthjilard。」

「えっと………状況的にミーズはMs.だろ?で、ミザーはMr.ってとこか。でもヒーズってなにさ?ヒーズジャス、って事か?

ヘーネスー、ジャスは、ヒーズジャス?」

「Wiy。** Hiyz *、Mia、Ggias、Lia、Neige、** *** ******。」

「んーと…つまりほぼ誰にでも使えるのか。さん付けって事かな?おk、それならなんとか覚えられるな」



なんとか覚え、納得する。

なんか地球での言語に似てるとこがあるから、まだ覚えやすい。


うんうん頷き頭の中の辞書に書き込んでいると、ドアがノックされて向こうから声が聞こえた。


ジャスさんはジラードさんに何かを聞き、ジラードさんはそれに頷く。 それを確認したジャスさんはドアの向こうの人を呼んだようだった。


更に人が増えたので少しビクッとする。


入ってきたのは有能そうなメイドさんと、料理等の乗ったカートを押している、フワフワしたオーラのメイドさんだった。



「*****。……****?」

「Harness * ***** ***。*** ** ******** ****」

「**。*** ******* *******、********」

「Misr.Pluggias〜。**** *** ********〜?」

「** ****** mia……………」

「*** Harness ******** ********。」

「**〜?」

「Harness **** ****** ******」

「**…………」



なんかまたジラードさんが拗ねてるけど、なに言われたんだろ?

てかやっぱ言葉が全然わかんねェ………。


ちょっと膨れっ面になっているジラードさんがこっちに来て語りかけてくる………が、やっぱり不思議言語なのでわからない。


取り敢えず、ミアっつーのが私って意味かな?

英語で言うI amのI。


多分地球の言語を混ぜこぜにした感じの様な気がする。

ハッキリと理解は出来てないが、全く違う言語よりは覚えるのがまだマシなはずである。


何やら話しかけてきていたジラードさんは、フワっとしたオーラのメイドさんが持ってきたカートから器を一つ取り、スプーンを持ってこちらに差し出してきた。


覗き込むと、何やらドロッとした…半固形の何かが入った深めの皿だった。


試しに匂いを嗅いでみたが。



「(くんくん…)……………なんかミルクというかチーズというか……パン粥みたいなもんかな?」(コテン、と首傾げつつぼそり



首を傾げつつチラッとジラードさんを見てみると…………なんか口元を押さえて悶えていた。

なんでさ。


取り敢えず危険ではなさそうなので受け取り、スプーンで掬って口に入れる。



「………………何これ、びみょー……不味いわけじゃないけど、びみょー………………」(眉潜め



なんか若干ぬるくなってるせいなのかグッチャグチャで、しかもチーズの癖が強すぎる。 もう少し薄くていいよ……塩っ辛いし。

眉を潜めるも、口をつけたものは仕方ないので皿の中身を全て食べ切る。



「うぇー………飲む物、水で良いから飲む物を……………」(ジェスチャーしつつ

「? **********………** ****」(ジャスに向かって

「*****。********** ********?」(メイド見て

「**。******** orangie(オランジーエ)」(頷き



顔を顰めて皿を返し、飲み物をジェスチャーで要求すると、コップに何かを注いで有能そうなメイドさんが持ってきた。


思わずビクッとしてジラードさんの腕に縋り付く。



「***、Fraulein(フラゥレイン)」(コップ差し出し

「……………………………」(陰に隠れつつジー…と見つめ

「…………***。**** * mia」(苦笑



さっきのパン粥みたいなのがびみょーだったので、コップの中身を警戒してジト目で見つめていると、ジラードさんがコップを受け取った。


どうするのかなと思いつつ見上げると、ジラードさんはおもむろに一口コップの中身を飲み、こちらを見てニコニコしながらコップを差し出してきた。

危険じゃないよー、とでも言いたかったのだろうか。


恐る恐る受け取り、くんくん匂いを嗅ぐ。

……柑橘系の甘い香りがする、飲んでみよう。



「(くぴり)…!美味い!」(パァッ!と笑顔に



一口飲むと、口にオレンジの様なスッキリとした酸味と甘みが広がり、鼻に爽やかな香りが抜けた。

オレンジジュースよりは薄いが、いろ○すやミ○みたいな感じで好きだ。



「♪」(くぴくぴ

「*** ***** *****?」(口元を押さえつつも微笑ましげに



コップの中身を飲み終わると、ジラードさんはそれをさり気なく受け取り、別の皿を差し出してくる。


今度は何だろ(くんくん)………スープか? 不透明な感じの良い匂いのするなにかが、さっきの皿より一回り小さい器に入っていた。


皿を受け取り、スプーンで一口食べてみた。



「(ふー…ふー…ふー…ぱくり)ぁつッ!うぅ……(ふー、ふー)」



……猫舌だから冷ましてからだけど。


食べると、濃い野菜スープだった。 いかにも栄養タップリ!的な感じの。

コレは普通に美味い。


黙々と食べ、皿が空になるとジラードさんはその皿を受け取りまた別の皿を出してくる。



こんな感じで、びみょーな空気の中食事を続けたのだった。








------------------








「………御馳走様でした」



色々出てきて腹いっぱいだよ……一品一品は其処までじゃないけど種類が多過ぎ………胃が痛い。


あ、デザートにフルーツだけじゃなくてプティングも出てきたよ。 日本のコンビニで売ってる様なトロトロな感じのじゃなくて、おばあちゃんが作りましたって風な固めの蒸しプリン。


何故かカラメルソースが無かった上にそこまで甘い訳じゃなかったけど。 中世とか昔によくある砂糖が珍しくて高いとかなんだろうかね?


全部消化には良さそうなのばかりだったけど、量が多くて困った。 まぁ、勿体無いから全部食べたけど。



さて……状況整理でもするか。



まず、言葉からして此処は日本ではない事は確かだ。

聞いた感じ英語でもドイツ語でもフランス語でもイタリア語でもない感じで、全部ごちゃ混ぜにした様な言語だった。


他にも、城で生活してるとかまず珍しいなんてもんじゃないし、見たこと無い生き物や、魔術の様な何かを使ってる時点で、地球でない事も確実だ。


取り敢えずここまでをふまえ、今居る所は異世界だと仮定しておく。



そして何故自分が此処に墜ちたのか。


これがよくわからない。


空から紐無しバンジーしてる時点でお察しだし、よくあるファンタジーなラノベみたいな展開で、まるで夢でも見ているかのようだ。

痛かったから夢じゃないだろうけど。



んでもって?

墜ちてた自分を保護(だと思う)してくれたのが、お城に住んでる質の良い服を着たキラキラのイケメン。 多分執事さんやメイドさんより位が上っぽい振る舞いしてるし、多分王子様。

この人優しい感じだし、きっとこの人のとこに居る間は変な事(奴隷とか)にはならないだろう…………めいびー。



うーん……今の所わかるのはこのぐらいかね?


やっぱり、言葉が通じないと不便だな………面倒くせェ。


まぁ言語が理解出来てもこのわけわからん状況を覆せる訳ではないが。




で、次の問題点は……これからどうすんべ?



文明の利器も無い場所で? 言葉も通じなくて? 明らかに元々居た世界じゃなくて? どうやって家に帰れと?


帰り方がわからないから暫く此処に滞在しなくちゃいけない事は確実だし? それどころか一生帰れない可能性も微レ存だし?


いったい俺にどうしろと………?



「…………頭が痛ェ………………」(額押さえ呻く

「Lia? ****?」(心配そうに顔覗き込み

「ぅあー……………取り敢えず飲み物ください」(呻きつつジェスチャー

「***、**……?**、***」(コップに先程の飲み物注いで差し出す

「ありがとございます………美味し」(頭押さえつつ飲む



のみものおいしいわー。(現実逃避)



……うん。言葉がわかるようになるまで、あるいは帰る方法が見つかるまで、ペットの様にのんべんだらりとさせてもらおう。 それしか無い……というか、出来ない。




実に憂鬱だ……自分、生きていけるかな………?

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