みづきさんとぼくは今日も平和です

岡野めぐみ

晩秋から春の手前まで

(1)いい夫婦の日

 市杵嶋姫命という日本神話の女神様に女官候補として仕えているみづきさん。

 いずれ女官となるために、女神様から与えられた仕事をこなす日々を送るうち、人間の世界にも慣れてきたようだ――

「仙太郎、どうやら今日は『いい夫婦の日』らしいな」

「そうらしいね」

「しかし、夫婦の日だろうと何だろうと仏滅だったら式場は安いのだろう?」

「……そういうこと言わない」

 たまに妙に詳しくてびっくりさせられることもある。

「しかし、よくできているよな」

「ん、何が?」

「十一月二十二日はいい夫婦の日、十一月十五日はいい遺言の日――十一月は人生の墓場というヤツだな」

「ごめん、ぼく、いい遺言の日は初めて知ったよ」

 本当にびっくりさせられるけれども。


 みづきさんとぼくは今日も平和です。

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