勇者召喚というもの

「あ"あ"〜…。疲れた」

「朝のHR《ホームルーム》なのに何故にそんな疲れるの?教えて欲しいな」

「しょうがないだろ。朝の4時までゲームやってたんだから」

「全く…。朝までゲームやってるくせして私より勉強運動できる、嫌味だよね」


とある高校のHR。いつも眠そうにしているこの月夜つきよ夜弥よみこと俺は、幼稚園から一緒の幼馴染、結城ゆうき かえでと会話をしていた。


「へへ〜ん。凄いだろ。何処ぞの誰かさんと違って有能なんですよ!」

「誰が無能ですって〜!」

「おい、何すんだ?」


軽くおちょくっていたら、楓が俺の顔に右手を当てて笑顔で、


「うん?ちょっと握るだけだよ?」


と言った瞬間、楓の指に力が入ってきた。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛いです!ごめんなさい!言い過ぎました!許してつかあさい!」

「うーん。どうしようかな〜」


楓は考える動作をしながらなんか言っている。

なんかミシミシ言ってきたんですけど、どうすれば助かりますかね?


「ごめんなさい!今度なんかしてあげるから!サンドバッグになる以外で!」

「それなら良し!」


楓は俺の顔から手を離し、笑顔で返事をした。

俺の顔には5つの跡がある筈。クッソ痛かった。砕ける気がしたよ。

…ヤベェ。しかも前より力が強くなってる気がするんだけど。もしや…ゴリラ化現象?


「夜弥ちゃ〜ん。なんか変なこと考えたでしょ〜?」

「いえ!何にも考えていません!」


なんだコイツ!?俺の心を読んだだと!?力があるだけでなく、心まで読めるのか!恐るべしメスゴリラ…。


「ん?何ですか楓さん。笑顔ですけどなんか怖いですよ?何ですかその手は僕の顔に触れて何をするんですか?僕何もしてま…ギャアアアアアアアア!」


また楓は俺の顔を握った。ヤバい砕ける砕ける。さっきより力が増しているんですけど。

ここまで強くなっているのか…!?恐るべしゴリラ化現象!


「朝っぱらから熱いですね〜」

「んな事言ってないで早く助けろ!ゴリラに、顔が、顔が砕か「へえ〜まだ喋れるんだ〜。それじゃもっと力を入れなくちゃね〜」おい嘘だろ!?イギャアアアアア!痛い!痛いです楓さぁん!!!」


あの野郎…。余計なことを言いやがって。俺も少し悪いけどさぁ。


ヤバい。顔の感覚がなくなってきた気がする。なんかミシミシ言ってる音がさっきよりも沢山聞こえてくるんだけど。痛みが脳に来てます!クッソ痛いです!


「ごめんなさい!許じで!今度飯奢るから!」


俺は痛みに耐えながらも、怖い笑顔を向けたまま俺の顔を握り潰そうとしている楓に許しを乞う。

しかし楓は、


「どうしよっかな〜。出来れば作って欲しいんだけどな〜」


と顎に指を当て、言ってきた。何これ笑顔なのに、笑顔なのに、もの凄く力が入っているんですけど。


「分かった!楓が大好きなハンバーグ作るから!作るから許してください!」

「なら良し!約束守ってよ?」


楓は手の力を抜き、怖い笑顔から真顔になり、


「でも変なこと考えたからこれぐらいはしないとね!」

「モゲガ!」


俺の頭を地面に叩きつけた。

今さっきので顔面の骨が逝ったかもしれない。

しかもタイルが割れているように見える。いや、割れてるな。

俺、死ぬのかな…。

俺はそのまま気を失った。


「ち……て…」


なんか声が聞こえる。誰かの声が頭に響く。クッソ痛い。

もっと寝かせてほしい。


「ちょ…き…」


やめてくれ。頭に、頭に響く。頭が壊れそうだ。


「起きなさいよアホ!」

「ボハァ!」


俺は腹に凄まじい衝撃が加わり、もがき苦しんだ。

腹を殴ったのは楓のようだ。何すんだよこのゴリラが!危うく死にそうだったじゃないか!


「落ち着いて聞いてちょうだい」

「これが落ち着いてられっか!何すんだよこのバカチンが!昇天しそうだったわ!」


大声で楓を怒鳴った。あれ?無茶苦茶声が響いている。

風景も机と椅子と黒板が有る教室じゃなくて、西洋風の壁だった。


「なんだこれ…」

「夜弥が気絶した後、急に教卓が光り始めて、気付いたらここにいたのよ」

「なんだその異世界転移は。何?これから王女様が来て、この世界を救ってくださいっ!って言いに来るのか?」

「何よそれ!迷惑すぎよ!」


うんそれは分かる。でも楓さん。僕の事を揺らさないでくれませんか?頭が痛くなる上に、気持ち悪くなる。


「皆様。お待たせしました」


突然、女の子の声が聞こえて、振り返ってみたら、フリフリのドレスをきた金髪青眼の女の子が突っ立っていた。その後ろには鎧を着たおっさんが2名ほどいた。


「突然ですがお願いです。この王国、いやこの世界を救ってください!」


フリフリドレスの女の子は土下座をしながら、お願いされた。


「言ったこと合ってたよ…」

「合ってたわね…」







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