僕と彼女とエトセトラ

第1会 出会いと再会

春手前の寒い日の昼過ぎ一人の老女と青年が歩いていた。

「ついたわよ」

「道案内ありがとうございます」

「いえいえ、これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

僕はこの春からj大学に通う。

そのために正二荘というアパートに下宿することになり、今日が入居日となる。

しかし、一度下見に来たのに道を忘れてしまったのでオーナーの大橋汐さんに最寄り駅からの道案内を頼んだのだ

「何度見ても大きいですね」

「たしかにそうねえ」

正二荘は昔ながらの日本家屋のような二階建ての住人専用家屋、脇に建てられている弓道場と大家宅と庭で構成されているためとても広い。

玄関をくぐると大きな階段が手前に見えた

「じゃあ、施設を案内するわね

まず、玄関を入って左手にあるのが女子部屋、右手にあるのが食堂。平日の朝夕は一緒にここで食べるわ。食堂って言っても大きなテーブルのある和室だから他の住人との交流に使われてるわね。で、食堂の反対側にあるのが女子トイレと女子風呂 。次は二階よ、階段を登って左手にあるのが男子部屋。ここがあなたの部屋よ。荷物は置いてあるからね」

「ありがとうございます」

ぼくに割り当てられた部屋は四部屋あるうちの最も階段から近い部屋だった

「あとは右手にあるのが卓球場、その反対にあるのが男子トイレと男子風呂。これで全部ね。

それと、食堂で六時から歓迎会を開くからそれまで部屋でゆっくりしててね」

「分かりました」

そう僕が言うと汐さんは階段を下りていった

汐さんが下りていってからは荷物を整理しながら時間を潰した

「そろそろ六時か」

そういうやいなや扉がノックされた

「はーい」

扉を開けると汐さんがいた。

「準備ができたから降りてきて」

「わかりました」

汐さんにつれられるまま食堂に入ると他の住人の方々がすわっていたのだが、僕の目に一人の少女の姿が見えた。忘れるはずのない人だった

向こうも僕に気づいたらしく目を見開いた。普段から無表情だった彼女にしては珍しいくらいのオーバーリアクションだ

「わ、渡会?!」

彼女がしゃべれないでいると金髪の住人が食いついてきた。それがきっかけか渡会も状況をのみこんだらしい

「誰や渡会て」

「金髪は黙ってて」

彼女はポーカーフェイスを作ろうとして変になった顔のまま

「私は渡会じゃない。大橋遊莉よ。よろしくね新住人さん」

と言いはなった

「……なんかよーわからんけど、顔おかしなっとるで」

金髪は強かった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と彼女とエトセトラ @akituki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る