魔眼の解放者

@yumeoibito

第1話 売られた子供

 奴隷一人の値段は、銀貨30枚。


 おおよそ、クリシュナ王国の一般兵3か月分の給料。


 これが、「健康で病気のない」人間の値段。


 俺は、障がい者だった。


 人買いに言わせると、値段は銀貨3枚という。


 その値段は、殺して食われる、鶏と同じ値段であった。


★★★


 俺は生まれつき目が見えない病気であった。


 両親は農民で、貧しい家庭だ。寒村である俺の村では、子を働き手として扱う。目が見えない俺は、当然農業は出来ない。障がいを持っている俺は、死ぬまで介護が必要だ。


 村では、障がい者を悪魔の呪いと言った。


 神様に捨てられた、悪魔の子だと。


 俺は呪いの子として忌み嫌われ、最初から売られる目的で育てられることになった。


 売られるのは、最低でも5歳から。俺は5歳まで虐待されながら育てられる。満足に飯も、服さえも与えられず、一年中腹を減らして育てられた。


 与えられる部屋などなく、乳離れが済んだ途端、家畜小屋に入れられた。


 癇癪を起した親兄弟には、よく殴られた。意味もなく、ただ殴るのだ。おかげで俺の体はいつも傷だらけ。いつ死んでもおかしくなかった。よく生きていたものだ。


 5歳になると、ようやくその地獄から解放され、さらなる地獄に突き落とされる。


 村には、一年に一度、奴隷商人が回ってくるのだ。


 魔法実験に使えそうな子供はいないか、金になりそうな女はいないか。人買いにくるのだ。


 貧しい農民では、到底得られない金で人間を取引する。税金や冬越えの為、女子供を売る家は多い。


 俺は5歳になる数か月前、急に殴られなくなり、飯も食わせられるようになった。理由は、少しでも高く売る為だ。


 5歳になり、俺は人買いに売られた時、両親の最後の言葉を忘れない。


「役立たずのクズが。やっと売れる年齢になったか。お前もようやく家族の役に立つな」


 この世界では、差別がひどい。実の親でさえ、容赦ない。目が見えないという「呪い」は、この世界の罪だった。障がい者は、人として扱われなかった。


 俺は、その言葉を聞いて子供ながらに思った。


 いつか、必ず殺す。


 まずは、お前ら親兄弟から、殺してやる。


 

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