クリスマスライブ2016

早咲きのサクラ



 舞台の裏で僕は妙に緊張をしていた。


 舞台に出ることに緊張している訳ではない。


「頑張ろうね」


「は、はい」


 運命か必然か、僕のアイドルとしての目標でありきっかけでもある桜野美沙さんとクリスマスライブ限定ユニットを組むことになりこの日を迎えた。


「僕とユニットを組んでくれてありがとうございます」


「わたしも美春ちゃん以外の人とユニットを組める機会なんか今までなかったから嬉しいよ」


 美沙さんの一言、一言が僕の心をときめかせる。


『さぁ、お待ちかねのクリスマスライブ限定ユニット一組目はこの2人だ!』


「行くよ、紫苑くん」


「はい、美沙さん」


 足元がゆっくりと速度を上げながら迫り上がり、僕らは真っ暗な舞台へと現れ一つのスポットライトに照らされた。




『早咲きのサクラ / 桜野美沙、早坂紫苑』



サクラ どこで見たかな


サクラ 誰と見たかな


肌寒い あの季節に


肌寄せ合い 見ていた


早咲きのサクラ まだツボミが多いけど


寒さに耐えて まだユキが残るけど



サクラ そこにあったかな


キミと ここであったかな


なつかしい あの季節が


少しずつ 近づいている


早咲きのサクラ まだツボミが多いけど


寒さに耐えて まだ春には早いけど



サクラ キミと見たよね


キミと ここで見たよね


早咲きのサクラ まだツボミが多いけど


早咲きのサクラ 永遠に


早咲きのサクラ 誰よりも美しい


早咲きのサクラ キミと見ていたい



 スポットライトが消えると同時に足元の舞台も下降し、僕らは次のユニットにバトンを渡した。

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