誰かの日常という形を借りて紡がれる短編のような物語。きっとどこから読んでも面白い。主人公の眼を借りて日常の断片を覗きみているのだけど、それ故に本人が見えない。その姿は鏡を覗いてもらわないと見られないのだろう。こんな日常を送るのは一体どんな人なのか、私はもっとそれぞれの主人公のことが知りたい。この人になってみたい。そう感じるほど、自然に「主観」に入り込める、不思議な没入感がある話。