まぜるなっ!キケン

たま。

1.プロローグ

第1話・え、俺、ついで?

「はっ、・・・ココは?」


 俺が目を覚ましたのは三百六十度真っ白の世界だった。

ほんと真っ白でこの空間の広さも全く分らない。


「えーと、確か・・・」


 VRMMORPG-Evolution Online-の三年目オープンを今か今かと待っていた所までは覚えている。

結局、INしたんだっけしてないんだっけ?

E/Oのローディング空間・・・って事はないな・・・。

ローディング時間が凄く短い上にこんな味気ない空間ではなかった筈だ。


『待たせてすまないな。 雨月亮あまつきあきら


 何もない空間から浮かび上がる様にして一人の女性が出現した。

女性にしては長身でスレンダー体型をしたカッコイイ系のお姉さんという感じだ。

タイトスーツなどを着ていたらホストと見違ってもおかしくなく、彼女の服装が身体の中心部が開き胸元やヘソ下が露になったドレスだった事で女性であると主張している。


『オレの名前はミリアネッサ、ミリアネスの神様だ』

「えーと、そのミリアネスの神様の所になんで俺がいるんだ?」

『雨月亮、君は死亡したのだよ。 詳しくは知らないがアースラが言うには「不慮の事故」らしい』

「はぁ!?俺、死んだの? 部屋に篭っていた筈なのに不慮の事故の意味が分らないんだけど!?」


 俺の住んでいる部屋は、マンションの十二階で○○モンG○に夢中のトラックが飛び込んできたとかいう事もない筈だ。

火災や地震なら災害、熱中症で死亡なら病死っていうだろうし、不慮の事故って何だ?

まさか、机の角に小指をぶつけて死亡?


『あー、色々考えている所すまないが、恐らくアースラにとっての不慮の事故なんだと思う』

「えっと、つまり、俺は死ぬ予定ではないのに死んだって事?」

『そういう事だ』

「・・・ちょま、・・・おいおいおいおいおい、それ洒落になってないんだけど、E/Oどうすんの? もうオープンしているだろうし月守夢想流もそろそろ完成が見えていのに・・・、俺死んだら意味なくなるじゃん」

『あー、錯乱するのも分らないでもないが、話を進めても良いかな』

「え、どうすんのこれ、いや、どうしたら良いんだ!?」


 アヤカの奴にオープンしたら久々に会おうぜなんて約束していたのに、すっぽかしたら怒るじゃねぇか・・・・・・、いや、俺死んだから怒られないか・・・良かった。


「じゃねぇぇぇぇ!」

『おぃ、話を聞け』

「うがっ」


 アイアンクロー、死んでるから物理的な痛みはないが、何か心が痛い。


「すんません。 錯乱してました」

『ふん、まあ良い。 でだ。 アースラから取引を持ち込まれてな。

勇者の素質のある者を”無償”でこちらへ譲渡する代わりに、お前もこちらで保護してくれってな』

「え、俺、ついで?」

『とまぁ、オレにとって悪い話ではないし了承した訳だ』

「俺、ついでなのか・・・」


 ほんのちょっと期待していた・・・訳でもないが、勇者は別にいるのね・・・。


『あくまでもそいつは勇者の素質であって勇者ではない。 まぁ、お前には関係のない話だ。さて、ミリアネスへの転生において、お前にはいくつかのお詫びの特典が付く。

そういえば、E/Oがどうとか言っていたな。 そのプレイヤーキャラ?としてお前を転生させてやろう。 性別が変わるが、まぁ、問題ないだろう。 次は・・・』

「ちょっと待って」

『ん?』

「性別が変わる? 俺のキャラ、ナイスガイのおっさんじゃねぇの?」

『いや。 アキラ・ローグライト、十五歳。 なかなかの美少女だぞ?』

「え? ヴォルト・ローグライトじゃないの?」

「・・・すまない。 そっちのキャラ?は、人を構成する要素が足らない」


 つまり、E/Oは三年目のオープンが終え世代交代によって使っていたキャラは、引退し最終ステータス・スキル構成などの情報以外を失い、子供キャラへと受け継がれた状態という訳か・・・。


『そう悲観する事もない。 このアキラというキャラは、こちらの世界でも中々の規格外に当てはまる。 恐らく、今から生まれるだろう勇者にも匹敵するだろう』


 そうでなくては困る。

アレは俺が会社を止め株を切り崩しながら毎日ほぼ一日プレイし続けた。

まさに心血を注ぎ込んだ無双の系譜だ。

月守夢想流剣術もほぼ完成形になりつつある。

E/Oでそれを完成させる事が出来なくなってしまったが、まさか異世界で完成させる事になるとは・・・。


『ふむ。 覚悟は出来た様だな。 次は転生の仕方だ』

「仕方?」

『勇者と同じ様に赤ん坊として転生するか。

赤ん坊として生まれるが十六歳を皮切りにお前の意識を少しずつ浸透させていくか。

取り合えずそのままの状態で転生するかだ』


 赤ん坊からってのは色々男の吟じを失いそうだから却下だな。

浸透が良いように思えるが、勇者(予定)と同年代って事だろうし・・・。


「そのまま転生は、つまり、どう言う事?」

『アキラ・ローグライトというキャラにお前の心をそのまま放り込むって事だ。

赤ん坊と違って天涯孤独かつこの世界の知識がゼロの状態だな。

しかし、お前の心は完全に移行出来る。 身体の違和感以外は弊害がない筈だ。

まぁ、お詫び特典として自動翻訳と一般常識とおまけぐらいはくれてやる』


 E/Oで果たせなかった事をこの世界でやり遂げる最短としては、そのまま転生が一番良さそうだ。


「そのまま転生で・・・」

『良かろう。 では、勇者の生まれる大陸とは違う場所で一番賑わっている都市へと送ってやろう。 さらばだ。 雨月亮いやアキラ・ローグライト』

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