あかねと直人のよくある日常
緋色
幼なじみとは
俺とあかねは同じ歳で、家は隣どおし、幼稚園から今の高校までずっと同じ学校に通っている。
腐れ縁というと聞こえが悪いが、要するに、世間一般でいうところの『幼なじみ』ってやつだ。
親同士の仲がいいものだがら、学校以外でも多くの時間をこの十六年と少しの間一緒に過ごしてきたわけで。流石に高校生になってからは減ったけど、日曜日に家族ぐるみで出かけることもまあ度々ある。
だから、何て言うか、一緒にいることが当たり前というか、幼なじみの枠を越えて家族みたいな感じに思えることもある。
たぶん、それはあかねも同じだろう。
「直くーん!」
呼ばれて振り返ればいつものあかねが走ってくる。
学校指定のセーラー服を靡かせて、近くまで来ると息を整えて、笑った。
自分より少しだけ低い身長、年齢に比べると幼い顔立ち、肩にかかる髪を今日は横で一つに纏めている。
「あれ、あかね部活は?」
「今日は休みだったの! そういう直くんこそ部活どうしたの?」
「俺も休みだよ」
「もー! 言ってくれればよかったのに! 一緒に帰れたじゃない」
頬を膨らまして拗ねたように怒るあかねに思わず笑ってしまう。
そんなこと言われても、俺だってあかねの部活が休みって知らなかったんだから。
「まあ、今一緒に帰ってるからいいだろ?」
まだ家までの道のりは半分以上ある。今からでも遅くない。
あかねは凄く単純だから、そう言って促してやれば、すぐに嬉しそうに笑うんだ。
「そうだね!」
笑って、俺の隣に並んで、ゆっくりと二人で歩き出す。
俺はあかねの笑顔が好きだ。
あかねのこと、家族みたいに思うけど、この笑顔を見ていると、それだけじゃないって思う。
たぶん、もっと別の気持ちがある。
それがなにか、本当は知っていて、まあ、これもたぶんなんだけど、あかねも同じだと思う。
ただ、まだ今のままでいいかなって思うから、俺はなにも言わないし、あかねも言わない。
何気ない会話をしながら、一緒に帰る。
これがありふれた日常で、たいしたことないんだけど。
あかねの笑顔を見て、一緒にいると、それだけでこのありふれた日常が、そうでないものになってしまうのだから不思議だ。
きっとあれだ。
あかねからは幸せになれるオーラが出ているんだろうな。うん。
まあ、これも絶対に口に出して言うことはないけれど。
ふとした瞬間につくづく思うわけだ。
俺はあかねが好きだなーって、ね。
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