交わった平行線

第1話

 桜が満開の井の頭公園で、私は、苦くて嫌いな缶コーヒーを横において、ベンチに座った。公園は、花見客でいっぱいで、幸せな空気に満ちていた。私という存在を否定するかのように。私はリュックを開き、死んだ恋人の本当の姿を知るために過去とともに主人公が旅に出るというなんとも今の私にふさわしい内容の本を取り出し、それを読みながら物思いにふけた。君と私は、どうしてこうなったのだろうか、どこかに間違いがあったのだろうか。君と同じ柔軟剤のにおいをさせた小さな子供が、犬とともに私の前を走り去って行った。

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