SENSE3
SENSE3
水測員「新たな対空探知一。対艦ミサイル、本艦に対しシースキミングで接近中!」
甲日「対空戦闘用意。」
射撃員「対空戦闘用意!」
戦闘用意の警報が鳴る。
甲日「艦長に連絡、恐らく敵潜水艦は海面付近まで浮上した後にUSMを発射したと推測されると伝えろ。」
射撃員「了解」
射撃員「VLS、主砲接続良し!攻撃用意!」
甲日「SM2発射用意、用意…打て!」
射撃員「SM2発射!」
緊張が走る一方でミサイルのインターセプトを期待するうちに残り10秒を切った。
射撃員「10、9、8、7、6…スタンバイ…3、2、1……目標、キル!」
演習の効果もあり、無事にミサイル迎撃に成功したがこれで安堵できる訳では無い事を全要員が理解していた。
甲日「ADVLA発射用意。」
射撃員「諸元入力完了、ADVLA発射用意良し!」
甲日「SUM発射!」
射撃員「SUM発射!」
「ながと」からSUMが発射された頃、同時に護衛艦「かが」から哨戒機SK-70Jが発艦準備していた。
また、潜水艦「ひりゅう」からも魚雷攻撃が実施される頃だった。
《潜水艦ひりゅう》
八重樫「敵潜と本艦との距離は幾つだ。」
伊矛田「距離25000、本艦の220°です。」
八重樫「魚雷戦用意。1番、2番魚雷装填用意。」
89式魚雷が魚雷発射管へ装填された。
八重樫「魚雷発射管注水、誘導は有線誘導にて行う。取り舵一杯、両舷前進原速、ダウントリム5°。深度300、針路2-2-0を取れ。」
航海員「取り舵一杯、両舷前進原速、ダウントリム5°、針路2-2-0。」
「ひりゅう」の艦首が深度を下げながら敵潜の方向へ向けられて行く。だが、有線誘導はある程度の慎重を要する誘導方法である為にこの場面ではその必要性が普通なら控えられる、とその指示を聞いた者は思ったが、伊矛田もその例外ではなかった。
八重樫「1・2番魚雷発射。両舷前進微速急げ。」
遂に「ひりゅう」から国産魚雷の98式魚雷が発射される。98式魚雷は他国の長魚雷と比較しても優秀な魚雷であり、その命中精度は演習にてお墨付きであったが、敢えて有線誘導にした事から八重樫のサブマリナーとしての慎重さが伺えた。
水測員「本艦の魚雷、56knで目標に接近中。敵潜、急潜行しながら取り舵50°。本艦の魚雷を探知したのでしょうか。」
八重樫「いや、私の推測では向こうはまだ探知していないはずだ。いくら最新鋭と言えども、最近までロシアの輸出用潜水艦を主力にしていたのだからな。そう容易く技術は飛躍するものではない。」
伊矛田「しかし…艦長、ではなぜ敵潜は回避行動に見える行動を取ったのですか。」
八重樫「それは水上に脅威があるからだろう。」
伊矛田「脅威…ですか。」
八重樫「我々は敵潜の第二次攻撃を早期に阻止する必要があると思わないか。」
伊矛田はようやく八重樫によるこの一連の攻撃行動指示が理解出来た。
潜水艦は水上との交信が途絶えていることが多い。だから艦長は「かが」がSK-70Jを発艦させる事を予測していてその支援攻撃を行うと決めていたのだ。
一見すると早期に敵艦を撃沈した方が良いと考察されるが、魚雷が命中しようが確実に撃沈に直結すると限られたことではない。
敵潜のダメージコントロールが強靭であった場合、撃沈する為にはそれなりの時間が掛かる為、その間に他の僚艦が攻撃されるかもしれない。
もしそう成ったらば、手間取っている間に不審船が接近し複数の対水上戦闘と同時に対戦戦闘や回避が必要となる可能性が浮上する。
物事を冷静かつ沈着に考え、先を見据えた指示だ、と今更ながら深く感慨を受けた伊矛田であった。
いよいよ「ひりゅう」の魚雷が敵艦に接触するまで残り20秒を切るタイミングになった。
八重樫「魚雷接触まで2秒に成ったら魚雷を自爆させろ。必ず艦首付近だ。」
魚雷員「了解!」
艦長から発せされた指示は伊矛田の考察内であったが、やはり他のクルーにとっては異例な物であると同時に高度なスキルを要する手法であると見なされていた。
伊矛田(魚雷を自爆させて艦首の魚雷発射管を破壊すれば攻撃が不可能になり、側面のソナーを損傷させられる…!)
水測員「本艦の魚雷、接触まで10、9、8…4、3、2……魚雷自爆しました!」
八重樫「敵艦の状態は。」
水測員「現在、16knで航行中、急浮上しています。」
八重樫「これで間も無く作戦の価値は証明されるだろう。魚雷の自爆で出来た水柱を視認したSK-70Jは間も無く爆雷攻撃を実施するだろうが、相手は速力が落ちている上に浅い深度に浮上中だ。誰にでも結末は解るはずだ。」
八重樫の言った通りにその後、「ひりゅう」のソナー探知は消滅した。
SENSE3 fin.
[兵器解説]
89式魚雷
海自が開発した国産魚雷でアメリカのMk.48魚雷を参考にして作られたが、その性能はやや母体より優れているとされる。長魚雷なので水上艦に使用した場合、かなり脅威となり得る。有線誘導により敵艦のデコイなどを無視できる事もあり得る。
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