異世界へ

星成和貴

 周囲を見渡す。日本とは思えない広大な自然。そこにいる人々も自分たちとはどこか、違うような気がする。

 なら、ここはどこだ?

「まさか、異世界に召喚された……?」

 疑問が思わず、口に出てしまう。しかし、それ以外に考えられない。

 そう、異世界だ。ならば、俺は……。

「いっくん……」

 考え事をしていると、後ろから声が聞こえた。振り返ると、香織がいた。

「香織も、来てしまったのか……」

「何、言ってるの?」

 香織は、分かっていないようだ。

 ここは異世界。今までの常識なんて通用しない。まずは、そう、香織に今のこの状況を理解させるのが先だ。

「香織、俺たちは異世界に来てしまったんだ……」

「え?あ、うん……」

「ここでは何が起きるかは分からない。価値観も、常識も何もかもが俺たちとは違うかもしれない」

「あ、あの、いっくん……?」

「ん?何か問題でもあったか?」

「あの、そうじゃなくて、その……、と、とりあえず、あたしたちは何をしたらいいの?」

「それは……まずは、この世界のことを知る。そう、それだ。そのためには、この世界の住人と話をしなくてはならない」

「そっか。じゃぁ、行こ?」

 香織はいつも通りの笑顔で、俺の手を引き、歩き始めた。香織は分かっているのだろうか?ここが、危険かもしれないということを。

 しかし、悩んでいてばかりではどうにもならない。まずは、どんなことでも自分から動くべきなのかもしれない。

 だから、香織に手を引かれ、俺は知らないこの場所を進み始めた。

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