第二話 策略の戦

 邪馬台国の兵が出発したとの知らせを受け、伊予国では狗奴国との戦いに向けての話し合いの場がもたれた。


南海道みなみのわたつみち(瀬戸内海航路)沿いの明石と吉備は、邪馬台兵、河内兵と合流し、ここ伊予国を目指している。彼らには到着後、二手に分かれ、日向国ひゅうがのくに(狗奴国の拠点。現宮崎県)の北側と東側から上陸してもらうつもりだ。ここに既にいる兵は、日向国の南側から攻める」


 伊予国王から兵を指揮するため用意された討議の間で、月読つくよみは室内に集まった各部隊の代表者を前に兵の配備についての計画を述べた。

 伊予国軍の副官である爾岐にぎをはじめ、集まった面々は真剣な面持ちで彼の説明に耳を傾け、何度も深くうなずいた。


「出雲の支配下にある北海道きたのわたつみち(日本海航路)沿い各国の同盟軍は、筑紫島(九州)の西側を航行し、西から上陸する。その後、陸路から接近し、敵を挟み込む計画だ」


 月読の隣で覇夜斗はやとが腕を組み、難しい表情で説明を続けた。

 牛利ぎゅうりは、先ほどから覇夜斗が渋い顔を見せている理由に気付いていた。

 覇夜斗の目は、一番下座の彼らに向かい合う位置に座する女に向けられているのだ。

 数多あまたの死闘を繰り返してきた屈強な男達が居並ぶ中に、日焼けし、気丈な顔つきをしているとはいえ、女が部隊の代表としてこの場にいるのは牛利にも不自然に思えた。


「あの女、何者だ?」


「伊予国の傭兵を束ねる者らしい」


 小声で尋ねる覇夜斗に、月読は出席者に緊張感のある目を向けたまま、抑えた声で答えた。


「ふん。女に勤まるのか。戦は遊びではないぞ」


 覇夜斗は面白くなさそうに頬杖をつき、なおも女を睨みつけていた。





「出雲国王様は、こやつがお気に召さぬご様子だったな」


 会合が解散し、回廊に出た牛利に爾岐にぎが背後から話しかけてきた。

 振り向くと、大男の後ろで先ほどの女が牛利に軽く頭を下げるのが見えた。

 男のように丈の短い衣を身に着け、無造作に髪をまとめた女は、よく見れば端正な顔立ちをしていた。

 だがその眼光は、獣のように鋭かった。


「女は男に守られるべきもの。そうお考えのお方だからな」


 牛利は苦笑しながら、爾岐の顔に視線を移した。

 心を見透かされそうな女の視線に、いたたまれなくなったのだ。


「まあ、無理もない。私も常々、こやつにはこのようななりをして欲しくないと思っている」


兄者あにじゃ!」


「ああ、すまん。すまん。指揮官としては、そこらの男の比でないほど優秀だがな」


「兄……。まさか……?」


 激しく叱咤され頭を掻く爾岐と女の顔を見比べて、牛利は目を丸くした。

 この勇ましい女が、先日酒を酌み交わした時、爾岐が妻にしてくれと頼んできた妹かと思うと、その意外性に驚きを隠せなかった。


「ああ、妹のたちばなだ。少々年増だが、いい女だろ?」


「兄者!」


 再び叱咤され、爾岐は顔を歪ませて閉口した。

 その様子を見て牛利は思わず吹き出した。


「おぬしが百人斬りの牛利か」


 そんな牛利の顔を、橘は睨みつけて問いかけた。

 牛利の顔が一瞬で固まった。


「兄がおぬしに何を言ったか想像はつく。だが忘れてくれ。私はこの通り一人でも生きていける」


 橘は腰に挿した剣を握り、牛利の目を見据えてそう言うと、二人の大男に背を向けて去って行った。




「やはり、想像と違ったか」


 橘が去ったあと、爾岐は恐る恐る牛利の表情をうかがいながら小さな声で尋ねた。


「おぬしが随分心配していたからな。正直もっとか弱そうな妹かと思っていた」


 牛利は苦笑しながら、少し言いにくそうに答えた。


「昔はあれでも、可憐でかわいい女だったのだがな」


 宮殿の回廊から庭へと移動した二人は、戦に向けて体を鍛える兵士達を横目に歩き始めた。


「あれの死んだ亭主は私の古くからの友人でな。内外に名を馳せる勇猛な戦士だった。少々変わった奴で、孤児やはみ出し者を自宅に集めては剣術を教え、傭兵として独り立ちできるように育てていたのだ。だが、五年前の戦で自分が育てた初陣の兵士を庇い、命を落とした」


 爾岐の話に、牛利はじっと耳を傾けていた。


「以来、あれは女だてらに亭主の後を継いで兵士を育て、彼らを食わすために、自らが大将となって兵士らと共に参戦するようになったのだ」


 そこまで語ると爾岐は深いため息をつき、牛利の顔を見つめた。


「あれは元来あのように強い女ではない。兄として肩肘はって強がっている姿を見ているのがしのびない。だがあれは、死んだ亭主より強い男とでないと再婚はせぬと言い張ってきたのだ。魏でも名を馳すそなたであれば、文句はないと思ったのだが……」


「人の心は、そんな単純なものではなかろう」


 牛利はため息まじりに小さく笑った。彼女にとっては、亡き夫より強い男など後にも先にも存在しないのであろう。

 つまり再婚するつもりなど皆目ないのだ。

 その気持ちは彼にも共感できる気がした。





 爾岐と別れた牛利が、兵達の鍛練に付き合っていると、宮殿の回廊の柵に頬杖をつき、物思いに耽る月読の姿が目に入った。


「何か心配事でも?」


 背後から近付き声をかけると、月読は驚いた表情を見せて振り返った。

 しかし、それが牛利であるとわかると、微笑んで大男を見上げた。

 そして、そのまましばらく、何か言いた気に彼の目をじっと見つめた。


「よろしければ、お話しください」


 月読の心を察して牛利が真剣なまなざしで応えると、彼はようやく意を決したように口を開いた。


張政ちょうせいという男だが……。魏の役人であれば、呉によって狗奴国が支配されていることを知らぬはずはないと思わぬか」


「……」


「お前の話では、あの者は魏の皇帝から、難升米なしめに銀印を渡すべきか見極めるよう、命を受けて渡来してきたのであろう?」


「……はい」


 牛利は月読の言わんとすることが理解できず、曖昧な表情で答えた。


「魏の前皇帝は若くして亡くなり、あの男が命を受けた頃、今の皇帝は幼少であったはず。とてもそのような手の込んだことを命じたとは思えぬ。つまり、皇帝の後ろで糸ひく者の差し金ということだ」


「……曹爽そうそう


 牛利の脳裏に、魏の皇帝の後見人を務める男の顔が浮かんだ。

 魏にいた頃、難升米と共に皇帝に謁見した際、何度か見かけた顔だった。

 だが、同時にもう一人の権力者の名も浮かんだ。


「いや……司馬懿しばいか?」


 魏の中枢では、皇族である曹家と、帝位を狙う司馬家とが水面下で日々凌ぎを削り合っていた。

 牛利がまだ魏に留まっていた頃、それぞれの家の重鎮である曹爽と司馬懿の二人は、即位時まだ幼かった帝を補佐することになった。

 身内である曹爽の方が幼帝の信頼を得ていたが、数多の戦を勝ち抜いて巨大化していく司馬家に圧され、曹家は徐々に力を失いつつあった。

 血統を重んじる倭国と違い、魏では帝位でさえ時の実力者が我がものにできるのだ。


「彼らの権力争いに、我々は利用されているのではないだろうか」


 月読は牛利から視線を外し、鍛練に励む兵士達を見下ろしながら淡々と続けた。


「魏が呉を征圧するにあたり、海の向こうにその残党がいては完全な統一は成し得ない。かといって、本国から大軍を送り戦を仕掛けるのは、ただでさえ内戦が激しい中ではかなりの負担のはずだ。それなら倭国内の争いとして、邪馬台国の連合軍が狗奴国を攻め落としてくれれば、彼らにとって好都合だ。そして、それを成し遂げ、手柄にすれば、それを指示した者の功績となり、地位が上がるに違いない」


「……!」


 牛利は目を見開き、言葉を失った。


「もともとは、難升米に狗奴国を落とさせるつもりが不適格と判断したのか。場合によっては、難升米も意図的に我々に消させたのかもしれぬ」


 難升米に利用されたあげく、故郷を追われた月読にとっては、何者かに再び利用されているのではと思うだけで、例えようがないほどの苦痛を感じていた。

 額に手を当てて苦渋の表情を見せる月読に、牛利はかける言葉も浮かばなかった。

 同時に、月読の推測が真実であれば、長年に渡り己自身も張政に利用されていたことになり、心中は穏やかではなかった。




「利用されればよいではないか」


 不意に背後から、覇夜斗の覇気のある声が聞こえた。

 並んで回廊の柵に寄りかかっていた月読と牛利は、同時に振り返り、白装束の男を見つめた。

 覇夜斗は話し込む二人の姿を見かけ、少し前から彼らの話を聞いていたのだ。


「相手が利用するつもりなら利用されればよい。狗奴国を平定し、倭国統一することは、我々にとっても悲願だ。狗奴国が渡来人の手中にあるのならば尚更だ。倭国に取り戻すいい機会ではないか」


 月読と牛利は、不安気に顔を見合わせた。

 彼らには覇夜斗の発言は楽観的に思えた。

 今回は魏の策略に乗り、狗奴国を呉から取り戻せたとしても、次は呉よりも大国である魏によって、倭国全体が侵略されるのではないかと憂いたのだ。

 そんな二人の表情を気にとめる様子もなく、覇夜斗は続けた。


「魏としても、倭国を朝献国ちょうけんこくにこそすれ、乗っ取るつもりはないはずだ。海を越えて人材を送り、統治して利を得るには、倭国は小国過ぎてうまみがない。たとえこの先誰が魏の皇帝に納まろうとも、魏からの輸入品を流通させ、たまに朝貢ちょうこうして機嫌をとれば友好関係を維持できるはずだ。ならば逆にこちらが向こうを利用して、倭国統一を実現させればよいのだ」


 渡来人の流入を逆手にとってきた、出雲国の王らしい考えだった。

 覇夜斗の話を聞いているうちに月読の心は少し軽くなり、表情が和らいできた。


「その張政とやらに使いを送ってやれ。相手が呉であると知って武力の違いに辟易へきえきし、とても勝ち目がないと。親玉が誰であれ、狗奴国平定を企てたやからなら、魏から援軍をよこして来るぞ。きっと」


 覇夜斗はにやりと笑って、二人に親指を立ててみせた。


「そなたの言動には、いつも驚かされる」


 月読は苦笑しながら、覇夜斗の目を見つめた。


「だが、そのおかげで見えていなかったものが見えてくる。私も、もう少し器用に物事を考えねばならぬな」


「そなたはそのままでいい。神は策略など立てぬ。けちなことは我々が考える」


 穏やかな笑みを浮かべてそう言う覇夜斗に、月読も笑顔を浮かべた。





 覇夜斗の提案で魏に援軍を要請すべく、張政への使者の手配を済ませた牛利は、再び兵達の鍛練に立ち会うため宮殿の庭に向かっていた。

 ふと、木陰に隠れるように立つ橘の姿に目が止まった。

 彼女はまるで愛しい者のように剣を両手で胸に抱き、うつむいて目を閉じていた。

 その表情は先ほどの勇ましいものではなく、慈愛と哀愁をたたえていた。

 やがて、立ち止まって自分を見つめる牛利の視線に気が付いた彼女は、慌てて剣を腰に携え、後れ毛を無造作にかき上げた。


「盗み見とは、いい趣味とは言えぬな」


 顔を赤くしながら橘は憎まれ口を叩いた。

 牛利は一瞬むっとして彼女を睨んだが、その腰の剣に改めて目をやり、あることに気が付いた。


「亭主の剣か」


 牛利の言葉に橘は一層顔を赤らめ、彼から視線を外した。

 彼女の腰に挿された剣は、女の体には不釣り合いな大太刀であった。

 牛利は直感で、それが戦死した夫の形見であると確信したのだ。


「これがあるから、私は戦える」


 橘は剣の柄に愛しそうに触れ、うつむいたままつぶやくように言った。


「おぬしも妻を亡くしたらしいな。兄から聞いた」


 橘は険しさが戻った顔を大男に向けた。


「おぬしのような強い男に守られておれば、さぞか弱く、可愛い女であったのであろうな」


 橘は牛利の妻に自分と相反するであろう女の姿を想像し、苦笑した。

 牛利はしばらく言葉を発することなく、遠くを見つめていた。


「異国で戦に明け暮れ、十年も待たせたあげく、その命さえ守ってやれなかった」


 やがて牛利は眉間に皺を寄せて、吐き捨てるように言った。

 橘は思いがけない彼の過去に、目を見開いて言葉を失った。


「百人斬りなどと言われても、ただ一人の命も守れなかったのだよ。この腕は」


 憎々し気に、拳を固めた己の右手を睨みつける牛利を、橘は息を呑んで見つめていた。






 邪馬台から出立した壹与いよと約千の兵は、かつて月読達が通った川沿いの道を辿り、河内国を目指していた。

 隊の先頭近くで大股気味に歩く男鹿おがの背中を、壹与は小走り気味に追い、彼の横顔を不安気に見上げていた。

 邪馬台を出てからずっと言葉少なく、深刻気に思いを巡らせている少年の様子が気になっていたのだ。

 そんな視線に気が付いた男鹿は、一旦歩みを止めて息を切らす少女に向き合った。


「すみませぬ。少し急ぎ過ぎましたね」


 申し訳なさそうにそう言う男鹿の目をじっと見つめて、壹与は意を決して尋ねてみた。


「張政と何を話していたの?」


 出発の直前、宮殿の門で彼女が世話になった侍女達に別れを告げている間、離れた場所で話す男鹿と張政の姿があった。

 しばらく言葉を交わし、老人に頭を下げて戻って来た少年の瞳が、うっすらと濡れていたのが気になっていたのだ。


「……墓の築造の続きを、お願いしておりました」


 視線を逸らせてそう言う男鹿を見て、壹与はそれ以上追求することはやめた。

 彼が話したくないと思っていることを、無理に聞き出そうとは思わなかった。


「……そう」


 微笑んで先に歩き始めた壹与の背を見て、男鹿はほっと息をつき、その後を追った。

 下手な自分の嘘に気付かぬはずはないのに、深く聞こうとしない壹与の思いやりが有り難かった。

 彼は心の中で彼女に感謝しながら、先ほどの張政との会話を思い返していた。




「必ず帰って来るから、泣かないで」


 宮殿の門の前で涙で袖を濡らす侍女達を、笑顔で諭す壹与の姿があった。

 少し距離を置いてその様子を見守っていた男鹿は、背後から自分達を見つめる視線に気が付いた。

 振り返るとそこには張政がいた。

 少年はそっとその場を離れ、老人のそばへ歩み寄ると、深く頭を下げた。


「しっかり役目を果たせよ」


 張政は男鹿の二の腕を軽く叩き、そのままその腕を力強く掴んだ。


「はい」


 涼し気な瞳が、まっすぐ異国の老人を見つめ返した。


「……張政様。ひとつうかがってもよろしいですか」


 少し間を置いて、男鹿は張政に問いかけ、老人は微笑みを浮かべながらうなずいた。


「今回の戦は、魏の意向によるものですか」


 張政は目を見開き、驚きの表情を見せた。


「魏がこのような小国に、あなたを長年留め置き、親身に尽くしてくださる理由がずっとわかりかねておりました。難升米が銀印を賜るのに値する人物かどうか見極めるためであれば、とっくにその役目は終えているはず。ですが、倭人に狗奴国を支配する呉を討たせるためだとすれば納得できます」


 奇しくも、男鹿も月読と同じ考えに至っていた。

 彼は戦に赴く前に、真実を本人に確認しておきたかったのだ。


「責めている訳ではありませぬ。そうであったとしても、あなたには感謝しています」


 その言葉に嘘はなかった。

 張政の手の上で踊らされていたのだとしても、親の仇が討て、壹与のそばで過ごせるようになれたことで、老人に対して少年は感謝の念を抱いていた。


「……おぬしに隠し事はできぬな」


 しばらく言葉を失っていた張政は、ため息まじりに苦笑した。

 それを見て、男鹿もほっと胸を撫で下ろした。

 彼にとっては、真実が分からず疑念を抱いている方が苦痛だったのだ。


「おぬしの予想通り、私は私にとっての主人に、倭国に呉の残党を始末させるために派遣された。当初は難升米に狗奴国を討たせようと考えていた。しかし、あの者にはとても果たせぬと判断したのじゃ」


「だから月読様の成長を待ち、その間に戦いの準備を進めていた……」


 男鹿はため息まじりにそうつぶやいた。


「うむ。だが、ひとつだけ違う。私は難升米が銀印を持つにふさわしい人物か、それを見極めることだけを命じられたのではない。最終的には、銀印がふさわしい人物が誰かを見定めることを命じられたのじゃ」


 それを聞いて男鹿は、きっと張政は月読に銀印を渡すつもりなのだろうと思った。


「許せ。私も上の命令には従うしかないのじゃ」


 真実を知られ信頼を失ったと思い、寂しそうに張政は笑った。

 しかし、男鹿は笑って首を左右に振った。


「我々が奪われたものを、我々が奪い返すのは当然のこと。そのきっかけを、あなたが与えてくれたのです」


 清々し気にそう言う男鹿の顔に、張政はしばらく目を奪われた。

 やがて鼻からため息を吐き出した老人は、あご髭を撫でながら視線を彼から逸らした。


「おぬしらの純粋さには、驚かされてばかりじゃ。魏では己の妻でさえ、政争の道具に利用する武将を五万と見てきた。おぬしらを見ていると心が洗われる」


 張政は男鹿の手を取り、自分の手を重ねると、少年の顔を見上げた。


「必ず、生きて帰って来るのじゃぞ」


 男鹿の瞳が一瞬潤んだ。

 今回の旅にあたって壹与を守ることを懇願されることはあっても、自分にこのような言葉をかけてくれた者は初めてであったのだ。

 張政の目もうっすらと濡れていた。

 彼も二年余りこの実直な少年と過ごす中で、いつしか我が子に対するような情を抱くようになっていた。


「卑弥呼様の墓を、お願いいたします」


 男鹿は潤んだ瞳を隠すように、老人に頭を下げた。




 少年の歩みに合わせようと、意識して早足で歩く壹与の後ろ姿を見ながら、男鹿は改めてこの事実は自分の心の中だけに留めておこうと思った。

 彼女には今回の狗奴国との戦いが、純粋に倭国統一のためのものだと信じておいて欲しかった。

 大王として、巫女として、命さえかけようとしている彼女に、この戦が他国によって仕組まれたものだとは知られたくなかったのだ。

 しばらく息を切らせながら、峠道を登っていた壹与の足が突然止まった。

 男鹿が後から近付き隣に並ぶと、二人の眼下に河内の町と、光輝く河内湖が広がっていた。

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