同僚のNさんの場合

何も考えない系四十代、店に来る。

さて、何からお話しようかと思いまして、最初はきっかけをくれた人にするのが筋ですよね。そんなわけで、お話させて頂きます。

仮に、ここではNさんとします。私は、(執筆現在もですが)某和菓子店の従業員をしています。

Nさんは、他店の店員さんの紹介でやってきました。というのも、当時辞めてしまう店員さんの代わりに育てようと、K課長が連れて来ました。

初対面のとき、あまりにも強烈だったので、よく覚えていますよ。

Nさん私服だったんですがね、その周りには、黒っぽいがにじみ出て見えたんです。

もう直感的にヤバい人なんじゃないかと、思いました。

私は、初対面の人見るとオーラのような、そういったものがたまに見えたりします(大抵、色合いとか、輝いて見えたりします)が、黒いもやもやは初めてでした。インターネット等で調べると、黒は何にも染まらない色なので、強いのだそうです。今のところ、Nさん以外で見たことはないですね。

唯一知る、Nさんより強烈な人がいるのですが、あっちはまた違ったのですよね。

因みに、一緒にその場にいた先輩のお兄さんも、一目見て何かを察したと後々教えてくれました。後日対面した店長とお兄さんと私、三人で話した時のNさんへの印象は、「これからお店、やっていけるのか?」


なんと言うのでしょうか、端的に周りの人は「不思議ちゃん」と言っています。

仕事中は、細かい事をよくしています。掃除したり、品だししたり。人一倍早く来ては仕事します。

誰よりも早く来て、マニュアル通りに仕事をする、ちょっと空気読めない人。

ここまでは、普通の人みたいなのです。

Nさんが仕事をはじめて3ヶ月ぐらいの時でした。

きっかけは些細な事でした、お店のレジ上げしたお金が合わないと、オーナーさん側の元金を管理する方から、連絡が来たそうです。

受けたNさん、レジ回りにお金が落ちているのを見つけたようです。で、届けますと言ったまま、お店にいたらしい。

こんな言い方なのは、私は遅番の日で、後から管理する方に聞いて初めて知ったのですね。 「早く届けに行ってね」と言われまして。驚いてNさんに聞いたら、ちよがみさんを待っていたからまだ届けていません、と。


いや、そうじゃないよね。

そんな大事な話、何故私に言わないんだ?

あれなの?年下だからなめてるのか!


そう思ったのですが、オーナー側を待たせていたので、まずはお金を届けてもらい、それから尋ねました。どうしてその話をしなかったんですか、と。

すると、すぐ届けるつもりだったんです、と言うのでね。

そこじゃなくて、お仕事の話なんですから、その日いる人に伝えてくれないと、困るんですよ。といいました。

初めて知ったのが電話って、どうなんだろう。なめてかかっているのは、薄々知ってたんですよ。この人、ちょいちょいタメ口だったんです。そこは、お兄さんと店長が怒ってくれましたが、イマイチ直ってないですね。

よく聞けば、他店の若い人にもそう話すそうな。(勿論、他店の人なので失礼です)

周りの反応は、「何でそんな大事な事、ちよちゃんに伝えないのかしら」

四十過ぎた人ならば、仕事の内容は言いますし、私の方が先に入ってる先輩だと割り切ってくれます。

まあ、希にいるようです。年若い店長に対しても、「私の方が年上なのに、偉そうにしないで」と思うお花畑思考の持ち主。因みに、他店の方にいらっしゃいます。


話が逸れました。

それでお金の精算は、次の日の朝にオーナー側の人がやってくれるのです。なので、前日休んでいた私に、状況とかわからないです。んでNさん、お金を落としたのは、私じゃないって言うんですよ。私は、ちゃんとこういうふうに渡しているから、違うと。Nさんでなければ、一緒にいた店長と言うことになるのね。

正直な話ですが、お金届けに行って金額合ってるので、そこまで犯人探しみたいなこと、しなくてもいい件なのですよ。

ただ、その日いた人含めて、「今度から気をつけて下さいねー」でおしまいになります、普通は。

何でこの人こういう言い方するのかな、それと店長にそんな言い草ですよ。ちよがみさん、段々腹立たしくなってきましてね。

じゃあ、店長がやったと言うんですか?尋ねました。するとどうだ。

そう言う訳じゃ……でも、店長


はい、それが本音なー。うんわかった、私もう信用できないかな。

そらもう、子供の言い訳でも酷いと思う程だった。思わず声荒げてこう返しました。

駄目です!何でそんな事いうんですか!!いくらなんでも言っちゃいけないんです!

Nさん、ぽかんとしてました。なんか、私が怒ってしまいましてね。

まあ、そこでお説教しました。まさか、おばさんを相手にするとは思わなんだ。

そしたら、ムッとしていたNさんは、「もう、やめます」と言い出しました。

典型的なパターンですよね、これ。

次の日、K課長の元に、お電話があったそうです。


ここまで周りに話して相談してみたところ、「失礼ね、店長をなめてるんだろうね」と思ったそうです。自分の都合の良いように言う人、もう駄目だなと。

元々、良い印象があった訳じゃないです。後日店長からも注意したそうですが、全く違う言い訳を話したらしい。この頃から、見切りをつけました。

オーナー側の総括の偉い方にも、「早く代えてもらった方がいいよ」と。

この一件後、うちの職場は空気悪くなる一方なのですが、Nさんは、けろっとして仕事しています。

店長と周りの人達から、「何も気にしてないのね」「精神的に強いのね」冗談半分、呆れ半分で言われています。素直にすごいと思うよ。だが、ああして殺伐した空気で毎回仕事するの、私なら辞めてるな……と思います。


ま、一番驚きなのが、一年以上経った今も辞めないってことでしょうかね。

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