嗤えど笑えず。

紫雲└(՞ةڼ◔)」

第1話

「英検2級、受かりますように...!!」



いつもの神社、響く蝉の音。

スクバを置いて、二拍二礼。


僕は、何も特技がない、名前の通らない学校に通う高校一年生の山中零。僕は何かとあるごとに此処に来ては願掛けをする。大会の時、高校受験の時、告白の前日、などの些細な「特別な日」の前日に。まぁ、此処の神社は僕のいとこに当たる奴が経営しているから冷やかし、と言うのもあるのだが。

「...肌寒い。」

夏の夜というのも冷えるものだ、これじゃあ今年の夏祭りはかき氷でも金魚すくいでもなく多分焼きそばが売れるか____いや、たこ焼きも捨てがた...


___リン、


鈴の音が聞こえた。

耳にも届かない程の小さな音が神社に響き、先程まで鳴いていた蝉も、ひっそりと息を静めていた。

「え、嘘、ちょ...?」

夏の夜、誰もいないであろう神社に、こんな事が起きるなんて。


...気付けば、走っていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

一目散に、脚を前に、前に。早く鳥居を潜れ、殺される。そう、本能が告げる。

嗚呼、なんで僕の心はこんなにも弱いんだ、まるでチキンハートみたいじゃないか確かに否定はしないけど...、ああでも殺されるのは嫌、あと鳥居まで数十メートルだからもうこんな事忘れよう、うん、あと2メートル、脚をもっと早く動かさなくては...

「っ!?」

僕は地面に突っ伏して力尽きた。

___あと、鳥居まで約30cm程の所で。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嗤えど笑えず。 紫雲└(՞ةڼ◔)」 @shiun_0099

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ