第7話「たったこれだけだけど・・・・・・」

・・・・・・気がつくと「リーフ」の前に来ていた。

 そして

「あ・・・・・・」

 美咲さんが店頭にいた。

「あ、健一さ~ん。来てくれたんですね~」

 美咲さんが僕に気づいて声をかけてきた。

「う、うん」

「よかった~。もう来てくれないのかな、て思ってました」

 うん、もう来ないつもりだった。

 けど、何故かわからないけど、体が勝手にここに


「あ、あの、実は」

「・・・・・・健一さん」

「はい?」 

「来てくれるのを待ってたんですよ。ずっと」

 美咲さんは涙ぐみながらそう言った。


 ・・・・・・え?

 何で泣いてるの?


「私ね・・・・・・初めて会った時から・・・・・・あなたの事が」


 え?


 ・・・・・・え?


 ・・・・・・えええええ!?


「あ、あのそれって、僕の事を? どうしてですか?」

「初めてお店に来てくれた時、売り物を見ていた健一さんの顔、すっごく優しくいい笑顔だったですよ。それに」

「それに?」

「・・・・・・聞こえてましたよ~、独り言~」

 美咲さんはちょっと意地悪そうなニヤけ顔になった。


 あ、しまった。美咲さんの笑顔が、って聞こえてたんだ。

「嬉しかったですよ。そんなふうに言ってくれて・・・・・・それで」

 そうだったんだ・・・・・・美咲さんもあの時から・・・・・・


「あの・・・・・・美咲さん」

「はい」

「僕と・・・・・・う」

 僕は目を瞑った。

 思わず付き合ってください・・・・・・と言おうとした。

 

 言ったら・・・・・・でも

 


“健ちゃん、早く言っちゃえ~”

 

 え?


 今のは、もしかしてみっちゃん?


 ・・・・・・ありがと。そしてごめん。



”いいから早く~”


 うん。


 おそるおそる目を開けると・・・・・・美咲さんが真剣な眼差しで僕をじっと見ていた。



 ・・・・・・



「美咲さん、僕と・・・・・・付き合ってください」

 たったこれだけだけど、凄く長く喋ったようだった。

 

「・・・・・・はい、喜んで」

 美咲さんは笑顔で答えてくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る