キャッチコピー
ヤケノ
キャッチコピー
これは監視カメラの記録映像である。
警察の取り調べ室のようでいて、どこか違う。
黒いスーツでサングラスをした二人の男たちが、八十くらいの老人に事情聴取、尋問している。
「私は逃げ回っていた。何かよい方法がないものかと模索しながら。
彼らに捕まると、複製を作られてしまう」
「複製? クローンのことか?」
黒服の一人が尋ねると、老人は首を振って否定した。
「そんなちゃちな技術ではないのだ。
彼らが作り出す複製の私は、私とまったく同じ姿形をしている。
服装から髪形、さらには内面、記憶まで同じなのだ。
だが、この複製方法には問題がある。
それはオリジナルである私だけが、その分歳をとってしまうのだ。
お前たちには私が何歳に見えるかね?
七十? 八十? いいや、私はお前たちよりはるかに若い。
私は二十歳になったばかりだ。信じられないだろう。身分証もある。
あとで調べてみてくれ。歯型でもDNAでも好きなだけ調べるといい。
二十歳の私は、コピーを作られたら四十の見た目に変わった。
私は必死に逃げた。こんな恐ろしい目にあって、ただ自分だけが助かりたい一心だった。
もうわかると思うが、次に捕まったのはコピーの私の方だった。
コピーがさらに複製されても、歳を取るのはオリジナルの私だった。
そして、オリジナルの私はお前たちに、コピーは彼らに捕まった。
コピーの私たちは複製を作られないように、まだ逃げてくれている。だから私はこうしてお前たちに拘束されたままだ。
だが、それもすぐ限界が来ることだろう。
……。
ああ、やっぱりだ。
コピーが捕まってしまった」
きっと同時に何体もの複製が製作されてしまったのだ。
老人は早回しの動画みたいに急激に年老いていく。
やがて、人間の生命としての限界が訪れた。
映像はここまでである。
キャッチコピー ヤケノ @yakeno
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