5-3


「えーっと、それでは、今後のための対策会議を、始めようと思うんですけど……」


 八咫竜やたりゅうとの決戦を控えて、とりあえず、これから使うことになる隠れ家へ、無事に到着することができた俺たちは、今後の方針を話し合うために、こうして全員揃って集まっている……、というわけなんだけど、残念なことに、色々なことが気になってしまって、まったく集中できないのであった。


 まず、微妙に狭い。


 ご休憩からご宿泊まで、しっかりとホテルとしての機能はそなえている部屋であるといっても、俺とエビルセイヴァーの五人に、竜姫たつきさんに朱天しゅてんさんを加えた上に、そこにローズさんまでいるという、総勢九人の大所帯では、そう感じてしまうのも、仕方ないことであるのだけれども……。


 続いて、内装が派手すぎる。


 というか、ある意味では、意味不明ですらあると言ってもいい。間接照明を多用しすぎて、むしろ微妙に薄暗いし、妙に鏡が多いというか、露骨なハート型をしている巨大ベッドを見下ろすように、天井にまでピカピカの鏡が仕込まれてる始末な上に、ゆったりとしたバスルームの様子が、透明な壁のせいで丸見えなのは、一体どういう了見だというのだろうか……。


 最後に、とにかく妖しい雰囲気なのが、見過ごせない。


 ムーディな調度品が、センス良く配置されているのはいいのだが、どこか甘い匂いが漂っていることもあり、下品ではないのだが、なんだか大人っぽすぎるというか、むやみにエロい気がして、背筋がムズムズしてしまう。


 総じて、まったくもって、落ち着かない。


「とりあえず、ローズさん、このピンクの照明、なんとかなりませんか?」

「はいはーい、お任せ~! ライトアップの色は~、ここのスィッチで、好きなのが選べちゃうのよん!」


 いや、なんですか、その設備……、と思っても、俺は口には出さない。こうして、普通のあかりになれば、多少は薄暗いけれど、悪の組織の秘密会議を行う場としての体裁ていさいは取れていると、考えていいはずだ。


 こんな、部屋の照明の色を変えるなんて、一見意味の分からない機能でも、自分が大きくなったら、必要になる時というやつが、おとずれるのかもしれない。


 大人の世界って、恐いなぁ……。


「っていうか、ここって一体、なんなんですか?」

「うふっ! このホテルはね、実はけっこう前に廃業しちゃってたんだけど、アタシがオーナーを口説くどとして、自由に使わせてもらってるのよん! あっ、もちろんだけど、ちゃんと隅々すみずみまで掃除してるし、ベッドもシーツも布団も枕も、全部新品で揃えてるから、衛生面は心配しなくても、大丈夫よん!」


 なんというか、ローズさんは快活かいかつに、色々と教えてくれるわけだけど、俺が本当に知りたいこととは、少し違うような気がする……。


 まあ、こんな敵陣の中で、こんなにしっかりとした隠れ家が使えるというだけで、十分すぎるほどに恵まれていると、ここは満足しておくことにしよう。


 今するべき話は、別にある。


「……それでは、仕切り直して。まずは、八咫竜に対して、どのようなアプローチで戦っていくべきか、なんだけど……」


 なんにせよ、まずはそれを決めなければ、話しにならない。


 現状を把握して、最善の手を打たなければ、満足できる成果など、得られるはずがないのだから。


「……もう、めんどくさいから、統斗すみとが昨日みたいに、ドカーンと隕石でも落して、全部ぶっ壊しちゃえばいいじゃない……」

「ひかり……、お前はまたそんな、ふたもないこと言い出して……」


 というわけで、これから最大の成果を得るためには、ああして完全にやさぐれた目をしながら、確実に二人以上で使うことを想定されているであろう巨大なベットに、ぐったりと突っ伏している少女の意見を、俺は残念ながら、却下せざるをえない。


 しかし、なんとかギリギリで耐え抜いて、このホテルに無事到着したとはいえど、まだまだ具合が悪そうだったので、一人で休んでていいと言ったのに、こうして強引にでも会議に参加しているのだから、ひかりは偉いと、褒めてやるべきか。


 まあ、ただ寂しいというか、体調が優れないせいで心細いとかで、みんなと一緒にいたいだけなのかもしれないけれど。


「今回の目的は、八咫竜の戦力を、できるだけ俺たちヴァイスインペリアルのものとして取り込むことにある。だから、勝利は絶対条件としても、こちらだけじゃなく、相手の被害も、可能な限り抑えたい」


 当たり前だけど、どうせ苦労するのなら、得るものは大きい方が良い。


 もちろん、高望みしすぎはよくないが、だからといって、最初からあきらめる理由もないだろう。


 ここは悪の組織らしく、どこまでも貪欲になろうじゃないか。


「そもそも、ここまで状況を混乱させているのは、八咫竜の最高幹部であったはずの八岐衆やまたしゅうが、おさである竜姫さんを裏切ったことにある。つまり、俺たちが目指すのは、その反逆者たちの鎮圧だ」


 やるべきことは、もうすでに分かっている。


 つまり問題なのは、その解決の着地点をどうするべきか、ということだった。


「もちろん、最高の結末は、裏切った八岐衆を全員改心させて、今後は従順な部下として、再び働いてもらえるようになること……、なんだけど、こればっかりは、相手の行動の真意だとか、思惑だとか、覚悟なんかが分からないと、どう転ぶかなんて、分かりようがない」


 自らを裏切った者を、再び受け入れられるかどうかは、竜姫さん次第だけれども、そもそもの話として、その裏切り者自身が、戻ることを望むかどうかという問題は、避けては通れない。


 最悪の場合は、辛い決断を下す必要だってある。それが上に立つ者の、責任というやつなのだから。


「というわけで、まずは今回のターゲットである八岐衆に関する情報を、できるだけ詳しく、教えて欲しいんですけども……」


 なんにせよ、まずは敵を知らないと、対策も立てられない。


 そして情報は、知っている者から聞くのが、一番手っ取り早く、確実である。


「……八岐衆とは、八咫竜の頂点である巫女を支えるために、組織の中でも特別な力を持つ者が選ばれた集まりだ」


 そんな俺の思惑を受け入れてくれたらしく、恐い顔をした朱天さんが、不機嫌そうにだが、話を始めてくれた。


 とはいえ、どうやらその怒りは、不躾ぶしつけな俺に向けてのものではなく、自分と……、そしてなにより、主君である竜姫さんを裏切った、かつての仲間たちに向けてのものであるようだというのが、救いといえば救いなのかもしれない。


「八岐衆の中では、その立場と権限に差はないが、それでも序列として、より強い力を持つ者が、より若い数字を与えられることになっている」

「数字……? ああ、そういえば、今回のクーデターの首謀者っぽい、あの黒縄こくじょうとか名乗ってた、いけ好かない男は、自分でいちくびとか名乗ってましたっけ」


 敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。


 ここは貴重な情報を提供してくれる朱天さんに感謝しつつ、少しでも相手のことを知るために、努力するべきだろう。


「黒縄は、実質的な組織の運営を任されるくらいには、部下の指揮と、そろばん勘定にはけている。呪術を使うので、それなりに戦闘もこなせるが、一番厄介なのは、その性格の悪さだな」


 朱天さんが、そう吐き捨てたのは、あの嫌味な男が単純に裏切り者だからなのか、それとも最初から、あまり仲が良くなかったせいなのか、俺には分からないけれど、なんにせよ、その険悪さは、八岐衆という集団の結束力を疑ってしまうほどだ。


 でも、なるほど……、つまりあいつが偉そうだったのは、これまで実質的に八咫竜を動かしてきたのは、自分であるという自負じふからのものだったのかもしれないな。


 まあ、こちらにとっては、どうでもいいプライドだけど、本人にとっては重要だというのは、よく聞く話ではあるし。


「そして、二の首にいるのが白奉びゃくほう……、八咫竜の中では、最古参の老兵だが、その実力は折り紙付きだ。武芸百般に通じ、その堅牢な守りは、誰も崩せない。おそらく単純な個の力という意味なら、八咫竜で右に出る者はいないだろう」


 次に出てきた名前に、聞き覚えはなかったが、それを口にする朱天さんの様子が、先ほどの黒縄の時とは、あきらかに違うということは、俺にだって分かる。


 そこにはただ、困惑と、悲しみだけが、満ちていた。


「……それに白奉は、姫様が小さなときから、ずっとおそばで見守ってきた。甘いことを言っているのは自覚しているが、他の連中はともかく、白奉までが裏切るなんて、いまだに信じられない……」

「白奉は物静かで、時に厳しかったですけれど、私にも、そしてみんなにも、まるで本当のおじいさまみたいに優しくて、大きな存在でした……」


 いつもはクールな彼女らしくない、弱気なため息を吐いている朱天さんと、本当に悲しそうに目をせている竜姫さんを見れば、その白奉という人物が、二人にとってどれだけ大切な存在だったのか、察するに余りある。


 ここまで信頼されていた人物が、ただ黒縄の口車に乗ったとは、相手を知らない俺としても、素直には考えれない。もしかしたら、そこにはなにか、長らく組織を支えてきた、白奉という老兵なりの思惑があるのだろか。


 それは、願望にも似た憶測かもしれないが、もしかしたら、今回の八岐衆の裏切りには、決して単純な一枚岩ではない、複雑な事情が隠れているのかもしれない。


「えっと、それで、三の首は、朱天さんでしたよね?」

「ああ、そうだ。そうなるな……」


 とはいえ、憶測は憶測に過ぎないし、いまは真実を確かめる術がない以上、そこで立ち止まってしまうのは、なにも生み出せない、虚しい感傷だ。


 そして、そんなことは、本人が一番分かっているのだろう。俺が下手にうながすまでもなく、朱天さんが、その瞳に決意を込めて、再び口を開いてくれた。


「続けるぞ。四の首を務めているは、蒼琉そうりゅうという少年だ。まだ若いが剣術に長け、異例の早さで八岐衆に抜擢されている。将来を期待されているということもあるが、その実力は本物だ。半端な相手が挑めば、一瞬で真っ二つにされるだろう」


 さて、俺も気持ちを入れ直し、再び話に集中しているのだが、この蒼琉という名前にも、やっぱり耳馴染みはない。


 しかし、若くして巨大な悪の組織である八咫竜の中でも、重要なポジションに食い込んでいるのだから、決して油断するべき相手ではないのだろう。


「五の首は、さっき遭遇した空孤くうこ……、こいつは占術を操り、自分のことを国を追われた狐の子孫だなんて、うそぶいているが、真偽のほどは知らん。護符を使って幻を見せたり、相手を惑わせるのは得意らしい。四の首の蒼琉がお気に入りなのか、常にべったりと、くっ付いていたな」


 今度は知った名前……、どころか、その容姿すら頭に浮かぶ相手が出てきた。


 その空孤という女性に対して、先ほどは有利に事を運べたが、あの厄介な術を本気で使われたならば、今度もあれだけ簡単にいくという保証はない。敵をあなどって不覚を取るような、無様な真似はするまいと、俺は心に刻む。


「その下……、六の首を名乗っているいるのが、牙戟がげき。こいつは白奉の弟子で、強いことは強いんだが、ただの馬鹿だ。戦うことしか考えてない、生粋の戦闘マニアで、それ以外はからっきしな男だから、ぎょやすいといえば、ぎょやすいだろう」


 朱天さんの口振りから、少なくとも彼女がいだく、その牙戟という人物に対する印象は分かった。そして、今の俺に、その評価を疑う理由はない。


 しかし、だからといって、油断は大敵だ。どんな相手であろうと、それを正面から叩き潰すにしても、からを使うにしても、入念な準備というやつは、必要になる。


「それから、七の首が阿香あかで、八の首が華吽かうん……、こいつらは、常に二人一緒に行動している姉妹で、敵の心だか、ハートだかを奪う魔法使いを自称している。ちゃらんぽらんな言動を繰り返す、黒縄の腰ぎんちゃくだ」


 なるほど、これで八人……、つまり全員というわけか。


 しかし、こうして全容を聞いてみると、どうやら同じ八岐衆といえど、その中には派閥のようなものがあるようだ。


 黒縄に付き従っているのが、阿香と華吽。

 白奉の弟子が、牙戟。

 そして、蒼琉と空孤は、べったり。


 こいつらが、それぞれ仲が悪いとかだと話は早いというか、付け入る隙になるとは思うのだけれども、全員が足並み揃えて裏切っている以上、そう上手くはいかないと考えた方がいいだろう。


 やはり、できればもう少し、詳しい内情が知りたい俺は、思い切って朱天さんに、質問をぶつけてみることにする。


「その、八岐衆に関する、もっとプライベートな情報とか、聞いてもいいですか? 本名とか、家族構成とか」


 いや、別にそれを知って、例えば家族を人質に取るみたいな、そんな外道なことをするつもりは、当然ないのだが、どんな情報が、今後役に立つのか分からない。


 なので、とりあえずといった感じで、なんとなく聞いてみただけなんだけど……。


「八岐衆には、そんなものは存在しない」


 冷めた顔をした朱天さんに、バッサリと切り捨てられてしまった。


「八岐衆は、八咫竜を守るための、特別な存在ですから、選ばれた時に、それまでの過去を、つながりを、自分を、全て捨てることになっているんです。その身をただ、八咫竜を守るだけの存在とするために……」


 そして、竜姫さんの口から語られたのは、悪の組織の掟だとしても、かなり重いと言わざるをえない制約だ。


 とはいえ、部外者の俺が、他組織の事情について、ホイホイと口を出すようなものではない……、というのは分かっているんだけども。


「ですから、本当は朱天にも、もっと可愛い名前があったんですけど……」

「ひ、姫様! その話は、今はいいじゃないですか!」


 そういう、とっても気になることを聞いてしまうと、どうしても、もう少し深い話をしたくなってしまう。


 だけど、残念ながら、今はその時ではない、というか、朱天さんがこちらを睨んでいるので、ちょっぴり恐くて、言い出せない。


「でも、いくらそんなに重要な八岐衆のうち、七人が裏切ったからといっても、他の構成員たちが全員、はい分かりましたって、素直に従うものなのかしら?」

「あっ、樹里じゅり先輩。それは俺も、思ってました」


 なので、渡りに船とばかりに、俺は優しい先輩の出してくれた話題に喰いつく。


 いや、単純にそれだけではなくて、その点は俺も以前から、気になっていたことであることには、間違いないのだけれども。


「確かに! 普通はもっと、揉めてもよさそうだよね!」

「そうですね。幹部の裏切りなんて、八咫竜にとっては大事件でしょうに」


 火凜かりんあおいさんの言う通り、俺が違和感を感じているのも、そこのところだ。


 なんというか、部下が主人を裏切ったにしては、全てにおいて、静かすぎる。


「でも、これまで見てきた感じだと、確かに動き自体はつたないけれど、八咫竜の組織としての行動自体には、そんなに大きな混乱は見られないわねん」


 実際に、これまで八咫竜を観察してきたローズさんの意見は、これまで俺が感じてきた違和感を、さらに後押しするものだった。


 しかし、こんなことが、ありえるのか?


「申し訳ありません……。全ては、私の力がおよばないばかりに……」

「姫様! そんなことはありません! きっと、あいつらにもなにか事情が……!」


 悲しそうに顔を伏せてしまった竜姫さんを、慌てて朱天さんが慰めているけれど、俺もおおよそ、同じ気分だ。


 単純に考えて、確かに実質的な運営は、あのいけ好かない黒縄とかいう男が行っていたのかもしれないが、それでも組織を率いてきたのは、竜姫さんなのだ。


 そんな彼女をしたって、この裏切りに異議を唱えるものが、まったくいないだなんてことは、俺が彼女に肩入れしてることを抜きにしても、あまりに不自然な気がする。


 確かに、八岐衆という存在が、組織の中でも大きく、また単純な戦闘力という意味でも、他の追随ついずいを許さいないのだとしても、ここまでスムーズなクーデターなんて、違和感の塊みたいなものだ。その中には、朱天さんの部下だったいたはずなのに。


 八咫竜とは、決して小規模な集まりではない。それどころか、この国でも最大級の悪の組織だ。それだけ多くの人間が集まれば、そこには無数の思惑が存在する。


 つまり、構成員の中には、それこそ朱天さんのように、竜姫さんこそ、自らの主君であると考えているものが、少なからずいるはずなのに、まるで何事もなかったかのように、八咫竜の頭が、すげ替えられてしまったみたいじゃないか。


 それは、人間が集まる組織として、あまりに不自然な動きのように感じる。


「うーん、情報操作でもしてるのか……?」


 しかし、残念ながら今の俺では、その程度の発想が、関の山だ。


 だけど、どんなに情報を偽って、下の人間を騙すにしても、いくらなんでも限界はあるだろうし……。


「もしかしたら、統斗くんが、その天叢雲剣あまのむらくものつるぎっていうのを、みんなの前で抜いて見せたら、風向きも変わるんじゃないかな?」


 確かに、桃花ももかの言うように、今回の裏切りに反感は持っていても、強い力を持った八岐衆には逆らえず、じっと耐えているような八咫竜の構成員が、水面下には数多く存在していて、彼らの象徴でもある神剣を抜くことで、一念発起して竜姫さんのために立ち上がってくれる……、なんてことも、あるかもしれない。


 だけど、この状況では、それは確証のない推論ということになってしまう。


「なんにせよ、まずは敵の内部がどうなってるのか、確認したいけど……」


 やはり、ここで重要なのは、どれだけ多くの情報を握っているかだ。


 そして、そこで問題になるのは、その情報を集める方法、というわけだけど……。


「まっ、その辺にいるのを、適当に捕まえて、聞き出せばいいか」


 さいわいなことに、ここは敵のど真ん中だ。


 とりあえず、近場をあたって、詳しい話ができそうな相手を見つけるのが、当面の目的ということでいいだろう。


 まずはじっくりと、足場を固めていこうじゃないか。


「あら、もうこんな時間なのね! それじゃあ、夕飯にするから、ちょっと待っててねん! アタシの手料理で、ごめんなさいだけど!」


 おっと、ローズさんに言われて気が付いたけど、どうやら、もう日も落ちて、外はすっかり夜になってしまったようだ。なぜかこの部屋は、窓という窓が極端に小さい上に、妙な配置になっているので、すぐには分からなかった。


 さて、それじゃあ、体調の悪いひかりもいることだし、今日のところは、ゆっくり休んで、本格的に動くのは、明日からってことに……。


「ではでは! 後はみなさんで~、今日は、誰と、誰が、どの部屋で一緒に寝泊まりしちゃうのか、決めちゃったりしてくださいね~ん! うふっ!」


 なんて、気を抜いた瞬間に、ローズさんが軽快なステップで、この部屋を出て行くと同時に、豪快なウインクと共に投下した、特大の爆弾のせいで、ゆるみかけた空気が再び緊張に包まれる。


 ああ、どうしてそんなこと言っちゃうんですか、ローズさん……。


「えーっと、それでは、統斗くんと相部屋は誰か会議を、始めようと思います」

「いや、桃花さん、そんな真面目な顔で、なに言ってるんですか……」


 どうやら、俺たちが本当にゆっくりできるのは、残念なことに、もう少し先のことになりそうだった……。


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