全裸で異世界召喚された件

キリシマ

思ってた異世界召喚と違う

第一話 特出し劇場異世界座

 僕は今、見知らぬ場所で見知らぬ人間らに注目を浴びている。


 まあ、そりゃそうでしょうね。


 なんたってチンチン丸出しですからね。


「きゃああああああ!」


 目の前の女の子が叫び出す。


「待て待て待て、叫びたいのは僕の方だ」


 風呂に入ってると急に光に包まれて気が付いたらこの知らない場所に立っていた。


 幸い(?)僕はそういう知識はまあ、有る方だと自負しているから異世界召喚かな、と察しはつくけれど、流石ににタイミングが酷すぎた。


 よりにもよって風呂入ってる時は無いでしょうが。おかげで全裸のうえに全身びしょ濡れで召喚されましたよ。


「ねえ、叫ぶ暇あるならとりあえずタオルくれない? 風邪引きそう」

「いやぁあああ!」


 目の前にいる女子(僕の予想では僕を召喚した本人)は両手で顔を覆い叫びながらそっぽを向いてしまった。


 どうすればいいんだ……?!


「もういいや、誰でもいいからタオルを……」

「いやぁあああ!」

「きゃああああああ!」


 おいおい、タオルを求めたら悲鳴を挙げられるなんてこっちの世界じゃどういう教育されてんだ。いやまあ十中八九僕の格好のせいなんだろうけど。


 そして良く良く見渡すとこの空間には何故か女子しかいない。


 阿鼻叫喚の地獄絵図の中心に、びしょ濡れの全裸で立ち尽くす唯一の男がいた。


 言わずもがな僕なんですけどね。


 さて、どうするかと悩んでいるとこの空間の唯一の出入口であろう扉が開いた。


「貴女たち! 何を騒いでいるのですか……えっ」

「あ、どうも」


 入ってきたのはおっぱいのおっきな女性だった。髪は緑っぽい色でロングのハーフアップ。赤縁メガネ。そして白いカッターシャツに黒いミニスカ。タイツ。


 多分先生だ! 僕を見ても悲鳴を挙げないし訳を話せばタオルを貰えるはずだ!


「ちょ、貴方どこから侵入したの?!」

「なぜそうなるのか」


 少し顔を赤くした緑髪の人はたまらなく可愛くしばらくみていたかったが、どうにも僕の羞恥心もそろそろ限界なのでしっかり説明してタオルを貰うことにした。









「なるほど、それで裸だったのですね」

「話の通じる人で助かりました」


 貰ったタオルで体を拭いてそのまま腰に巻いてちんちんを隠し、今度は僕が質問をぶつける。


「今の状況を簡潔に説明して下さい」

「我が校、イルヴァーナ王立では新入生の使い魔契約の義を行っていまして……それて、おそらくは使い魔として貴方が召喚されたのかと……」

「人間の僕が?」

「はい、人間の使い魔召喚は過去に見ない例ですが、おそらくは」

「ちなみに帰れたりは?」

「今なら可能ですが……」


 緑髪のおっぱいの人は突然言葉を詰まらせた。何だ? 何が問題があるのか?


「エルナ=ソーカス、こちらへ」

「は、ひゃい!」


 呼ばれて出てきたのは召喚されたての僕の目の前で真っ先に絶叫した、おっぱい控えめ女子だった。


「さあ、貴女の呼んだ使い魔です。交渉を」

「は、はいぃ……」


 交渉……つまりあれか、僕は交渉に応じず断れば帰れるのか。


 恐る恐る、絶叫女子は僕の前にやって来た。なぜそこまで怖がるのか。


「わ、私と契約してください!」

「だめです」

「……うっ……うう、うっ」


 即答したら泣き出した。断り方も大人げなかったけども。


「いや、泣くなって……次があるんじゃないの? 僕なんかよりもっといいヤツ召喚しちゃいなよ」

「うぁああああん!」


 えぇ……膝から崩れ落ちて大泣きしはじめたんだけど……えぇ……?


「おっぱ……緑髪お姉さん、解説を」


 危うくおっぱいのお姉さんと言いかけたが止まったのでセーフ……セーフだよね? セーフです。


「おっ……! まあ、いいでしょう。使い魔召喚は人生で一度しか出来ないのです。その召喚で契約に失敗すれば魔法使いの落ちこぼれとして烙印を押され、それは一生付いてまわるのです。それはつまり、魔法使いとしての活動は実質不可能と言うことになります」

「……つまり?」

「えぇ……つ、つまり契約失敗は魔法使いとして死と同義です」

「マジかぁ……」


 なるほどね、だからこんなに泣いてるわけだ。成る程ね。


「ちなみに契約した際の僕のメリットとデメリットは?」

「メリットは契約時に一つ条件を付けられる事でしょうか。それを契約主が呑めばですが」


 条件を付けられるのか。


「じゃあ、デメリットは?」

「主が死ね使い魔も死ぬ事でしょうか」

「つまり主が死なない限りは不死。ただ主を守るって認識でいいんですか?」

「はい」


 なるほど……泣いてる彼女は、つまり人生を懸けて僕を召喚したのか。


 僕が断れば人生は終わったと同然で……


「ねえ、エルナちゃん……だっけ? 君の置かれている状況はわかった。……契約してもいいよ」

「ほ、ほんとですか?」

「うん。でも────を用意できる? できるなら、僕は君を一生守れる」

「は、はひ! 大丈夫です、その条件なら呑めます!」


 絶叫女子改め、我が主──エルナ=ソーカスの手の甲に軽くキスをして、契約は成立した。

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