第10説 初春の転校生

 春休みを目前もくぜんにして転校するということは、それだけでも驚くことだが、もっと驚いたのは自分のほかにもう一人、転校生がいることだった。事前に知らされていなく転校初日、少し緊張した面持ちの中で銀縁ぎんぶちがねを掛けた若い女性担任のおおなぎさ先生に告げられた。一応は転校に慣れていた為、朝礼時に行われる自己紹介の挨拶あいさつ容易よういだった。自分がさきに自己紹介を済ませた後、隣にいる自分と同じく転校生の虎耳とらがみゆい華奢きゃしゃな身体で少し背伸びをしながら黒板に自らの名前を書いていた。虎耳とらがみ自身も両親の都合で引っ越して来たらしい。最後に担任の大神渚先生が締めである決まり文句を言う。

「ということで、今日から2人はクラスメイトです。みんな、仲良くしてね。虎耳とらがみさんや和泉いずみ君も分からないことがあったら、先生や周りのみんなに聞くと良いからね。それじゃあ、授業を始めるよ。日本史教科書P.13*平安時代のページを開いて…」

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