日出ずる国の夜明けの頃~日立製作所を創った男たち

式村比呂

第1話 はしがき あるいはコミック原作応募に添えて

日本に元気がない。

歴史を振り返ると、長い日本の歴史の中で、高度成長期とその後のバブル期は、ある種異常な状況だったといえる。


明治維新から第二次大戦まで、日本はそれほど裕福な国ではなかった。

という言い方はまだ美麗に過ぎる。

明治維新で新政府にはのっけから、多額の対外負債と不公平な国際条約が残された。

幕府を倒したからこれらは踏み倒す、とは行かないのが国際社会だった。

明治政府は、この八割方農業生産という弱小で貧乏で債務過多の国家を抱えて難渋した。

不平等な条約の是正に取り組むも、老練な西洋政治に翻弄され、気づけば何一つ変わっていない。

殖産興業に励もうにも、まずはお手本となる外国人を多額の金銭で雇い入れねばならず、導入される機器は全て外国製、それもひどい為替の下での暴利ともいえる金額の製品ばかりだった。


帝国大学を卒業した日本屈指のエリートサラリーマンが月給50円の時代に、300円を超えるような高給取りの「お雇い」外国人に指揮をされ、ほぼ全ての産業で外国製の機械が当たり前だった時代。

それでも様々な分野で「国産」を目指した男たちがいた。


日出ずる国「日本」が大日本帝国としてやっと立ち上がった当時、夜明け前の暗い闇を、手探りで歩んでいった男たちの姿をみて、出来うることなら、これからこの国を作っていくだろう人たちに何かを感じて欲しい。

この作品はそういう想いで描こうと思う。

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