第六夜 悪魔と天使
急きょ決定した納涼大肝試しオリエンテーリングの開催決定の会長の鶴の一声に、スタッフ達の動揺も目に見えて明らかで、相当狼狽えていた。
そもそも準備が整っていないのだから、当たり前だろう。
本番と並行しながらの準備に、まさしくコマネズミの様に駆けずり回って、目まぐるしさで働いてくれていた。
「なぁおい。なんでさっきはあんなことしたんだよ?」
運動場の隅で、ボクはアリスを問い詰めていた。
「だってご主人たまも天使のヤツのあの挑戦的なふてぶてしい態度を見ましたでしょお?」
アリスがプーっとふくれっ面して答える。
「そりゃあのコのおっかない視線にはビックリしたけどさ。でもだからってみんなが楽しみにしてたカレー作りイベントを無くしちゃうことはないだろ?」
「あたしだってご主人たまにカレーを作って差し上げたかったけど、悪魔にも譲れないプライドってものがあるんDEATH!!」
なんてなかなかかわいらしいことを言う。
「それがライバルとの勝負だってのか?」
「だからライバルなんかじゃありませんよぉ!でも天界のヤツに舐められたままおめおめ帰ったりしたら、サタン様に喰われちゃいますからね★」
確かにそれはかなりおっかない。
うちの湯船を便器にするほどのデカい魔族の王だ。アリスくらい一口で喰ってしまいそうだ。
「あのさ、サタン様は人間も喰うのかい?」
「マズイから止めとけって言ってました☆」
「・・・・そうなんだ」
聞かなきゃよかった。でも今回、同級生を喰わせる目的でアリス召喚したことを思い出して、サタン様を喚び出さなくてよかったと胸を撫で下ろした。やっぱり、眼の前でリアルに人を喰われたりするのはキツそうだ。
「でも肝試し大会で勝負なんてどうやるんだ?」
「決まってます!あたしとご主人たまは天使をビックリさせる側に回るんですよ☆」
なんだそんなことか?やっぱり女の子だ。意外にかわいいトコあるな。
「絶対心臓マヒでブッ殺して地獄に送ってやりましょう♪」
前言撤回する。
「どんな肝試しだよ!人間の子どもなんてみんな心臓止まっちゃうじゃん!」
「大丈夫♪人間のコにはちゃんと手加減しますってば☆」
にこやかにアリスが微笑んだ。
その無邪気な笑顔がかえってボクを果てしない不安で一杯にさせる。
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