第五夜 キャンプに悪魔がやってくる

「おーいアリス、明日のサマー・キャンプの準備はもう済んだのか?」

居間で本を読んでいたボクは顔を上げると、さっきから何やらゴソゴソやってる魔獣に向かって声をかけた。


「ハイご主人たま、今やってま・・くっお菓子がなかなか入らなくって★」

アリスが巨大なナップザックに、ぐいぐい詰め込んでいる。


「おいーッ!夜逃げでもするつもりか?!」


「だって3日も行くんですよぉ!」


「お菓子はひとり1,000円までって、キャンプのしおりに書いてあっただろ!?」


「あたしは人じゃないですもん」

口を尖らせてへ理屈を言う。


「人として行くんだからダメなの!ルールを守れないなら連れて行かないゾ!」

ボクは毅然と言い放った。


「ちぇー。じゃあバナナは?」


「バナナは別でもいいかな」


「やったァ♪じゃあメロンは?ビワは?」


「ビワはいいけど、め、メロン?」


「あとスイカは?」

立て続けに質問を畳み掛けてくる。


「ダメダメ、全部込みだ!」

どうやって持ってく気だよ!まさか主人にも持たせるつもりじゃないだろうな!?


「さっきはいいって言った」


「ダメダメダメ全部込み!1,000円までな!」

ボクは慌てて否定した。


「ちぇー!」


「なんだよ、最近反抗的だな。連れてくの止めよっかなァ」


「ご主人たま、なんでもお申しつけくださいな☆」

アリスは正座して向き直った。


「じゃあ全部台所に戻してきなさい!」


「は~い★」

アリスは、スゴスゴとナップザックを引きずりながら部屋を出て行った。


「まったく仕方ない奴だな」

これには苦笑するしかない。



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