飛行体

「工藤君って部活入ってるの?」

さすが社交的な女の子だ。もう慣れた口調で話しかけてくる。それか自分がシャイなだけだろうか。

「いいや、帰宅部だよ」

「だったらさ!私が活動してる研究会に入ってほしいな··」懇願する気持ちを目で訴えてる。

「え?研究会って?」

「私と友達がメンバーなんだけど、人数もう少し増やしたいなーって思ってたからさ、工藤君に入って貰おうと思って!」

いくら何でも急に··確かに活発的な性格だとは思ってたけど強引なところには気が引けてくる。それに何の研究会だ?

 聞こうとした矢先に美咲は空を見て驚きの声を上げた。「うわー!!出たっ!出たー!!」

 同じ方向を見ると空に明々と光る黄色がかった丸い物体が山に向かって飛んでいるのが見て取れる。え、UFO!?

 美咲は興奮した声で言った。「工藤君ついて来て!走るよー!」

 「あ、ちょい···」言うより先に美咲は謎の光が向かった方向へと全力で突っ走っていった。走るのは嫌いなんだが··

 

「はぁ··はぁ、待って高瀬さん··」胸が苦しい。それに何より汗だくだ。どれぐらい走っただろうか。すっかり街並みは変わり、気づけば周囲の景色は田んぼや畑、ちらほら民家があるぐらいの殺風景な感じになっていた。目的地の山まではあと少しだ。でも何でこんなところにUFOがいるのかと、徐々に疑いの気持ちが湧いてきていた。単なる飛行機とかじゃ···

「工藤君ー!何してんのう~早く早く!」汗をかきながらもお構い無しに走るよう迫ってくる。こんな酷暑であろうと、今は自分の好奇心にしか眼中には無いようだ。

「高瀬さん、歩こう。さすがにもう走れないし、あの光だってもう山のどこかに消えていったんだしさ」

「か~男のくせになっさけないな~工藤君は。わかったよ、でも急いでいくよ」  

 その後15分程歩きようやく山の入り口付近にたどり着いた。しかし様子がおかしいことに工藤は気付いた。

「ねえ高瀬さんあの人たち誰だろう。」

「ん?誰だろう··あの服って自衛隊の?」

確かに見た目は自衛隊ぽい格好だ。でも何でこの山に?

「どうしよう、あの人たち道塞いでるみたいだけど。」

一瞬美咲は黙り込んだが意欲に満ちた声でこう言った。

「行くよ、私。ここまで来て帰りたくないし、それにもしかしたらあの人たちUFOと関係あるんじゃない?テープまでして入り口塞いでおかしいよ。工藤君ついて来てくれる?」

 あまりの気迫に根負けしてしまった。汗だくでここまで来て引き返すのもあんまりだし、確かにUFOと関係あるのではと脳裏によぎっているのもあるからだ。

「うん。行こう。きっと何かあるよ。」

そう、まさかこの山であんな事が起こっていたとは···

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