ジェミニムーン・クライシス 〜伝説の武器に選ばれなかったけど、ママが作った武器で戦います!〜
七次元事変☄️💥
抗エントロピー増大箒『シャイニーブルーム』
プロローグ
それが初めて観測されたのはちょうど一年前。
それを見た人類はみんな衝撃に腰を抜かした。それを見るには空を見上げなければならないから、体制的にも後ろに倒れこみやすかったのだろう。
ある夜の野外フェスをしていたアーティストはMC中に腰を抜かしたが、それはそれでロマンチックだと言い、別の意味で女性たちを腰砕けにした。寒気で腰が抜けた人も多数いた。
それは二つ目の青い月、国際語で言えば『セカンドムーン』
地球の衛星軌道にある大質量を必ず月と呼んでしまう感性はどうかと思うんだけど、でも確かにいい名前はすぐに思いつかないものだ。
だからそれは『セカンドムーン』などと呼ばれて、世界中は大騒ぎになった。新たな祭りが始まった地域もあれば、災厄を忌み嫌って生贄を捧げた地域もある。しかしどちらにせよ起こる結果は同じだった。
人類史上初めて見る種類の天災、今までに類を見ない異形の生物。
やつらは二つ目の月と同時期に現れた。その形は地球上の生物とはかけ離れたもの……ではなかった。
寧ろ人型、四足歩行の哺乳類、爬虫類、虫、魚、あとカモノハシなど、酷似する動物、植物は多数だった。
異形の多くは写真に撮られている。そしてその写真を見たおじさんたちの世代は皆口をそろえて「なんだかゲームで見たことがあるような気がする」というのだ。分からないが見たことはある気がする。ならばおぼえている人も一定数いるというわけで。
ある人が言い当てた。「これはゴブリンだ」と。「そっちはダイアウルフだ」など。
異形はRPGにありがちな敵キャラだったというわけである。
人間を見つけ次第手当たり次第に暴れるそいつらとの生存競争が始まるのに時間はかからなかった。
モンスターと人間では、圧倒的な身体能力の差があったとはいえ、初めは銃器のおかげでなんとかなっていた。それが対策が遅れた原因の一つでもあるが。
銃弾一発一発は大した効果を得られなかったけれど、マシンガンで蜂の巣にしてしまえば強大な生命力を持つモンスターでさえも殺すことができたし、魔物のトカゲなんかが強力な鱗を持っていれば奮発して徹甲弾を使えば良いだけで、初めは簡単に倒すことが出来ていた。
しかし次第にモンスターが強力になってくると、対人用の兵器では役に立たなくなってくることが増えた。対物ライフルの増産が決まった。
だけれどそして最近は対物ライフルも豆鉄砲を食らったようにあしらう大型のモンスターが出現するようになり、被害も増え始めてほとほと困り果てていた。
これでは尻すぼみのジリ貧だ。皆がそう思っていた。すでに壊滅した都市もあった。世界恐慌が始まりかけていた。
しかし、二つ目の月が運んできたものはそれだけではなかった。人類の敵を打ち破るヒーローというものは存在したのである。
実は第二の月『セカンドムーン』が出現したのと同時期に起こり始めた事象は、もう一つあった。
その現象は世界中の遺跡や海底、時にはアスファルトや石畳の下から起こった。
神話に登場する武器防具その他の道具の類が、サビひとつなく、ひとりでに出土し始めたのである。
目撃者は言う。
「周りは夜の闇だったのに、光り輝く地面から武器が出てきて、飛んでいった。薄暗い輝きだったが、私にはそれが希望を示す星の煌めきにしか見えなかった」
出土した神話の武器は、情報が開示されていた研究者達の間で『Soul Trans Ancient Reacter』、略して〈STAR〉または『スター・アームズ』あるいは単に『聖遺物』と呼ばれた。
その武器は使用する人を選んだが、その攻撃は対物ライフルですら防いだモンスター達にもよく通った。
最新鋭の兵器でさえ苦戦するモンスターに、ただの剣や弓、槍などで立ち向かう様を見て、ある人が言ったという。
「彼らは〈勇者達〉だ」
それから〈STAR〉と〈勇者達〉はセットで扱われ、モンスターを続々と倒していった。
モンスターによる被害は激減し、それは人類が希望を見出すには十分な力だったが、人類にはさらなる試練が待ち伏せていた。
そして、その試練を打ち倒すための力もまた――。
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