優染 藍のこと。
@motocurum
第1話優染 ゆうそめ
気づいたら、随分と暑くなってもうカレンダーは7枚目の上から2段目を去ろうとしていた。
海の日を挟むように組まれた3連休、この街で1番に大きな花火大会が開かれる。
高校生だった私たちにとっては、青春の思い出を是が非でもそれぞれの最愛の人と作ろうとして、夏休み前の教室はざわざわと騒がしい。これもまた、花火大会と並んで僕らの恒例行事のようで、一種の風物詩のようだと教師の誰かが笑っていた気がする。
冗談じゃない。こっちは人生かけた大一番なのだ。笑い事なんかじゃあ決してない。
お昼に食べ損ねたお弁当を膝にのせて、頬に米粒をつけながら憤慨している少女は、私の幼馴染で、大親友の女の子だ。彼女は毎年この時期になると、こんな風に怒ってみせた。
微笑ましく思い、つい顔がにやける。するとすかさず彼女はお箸を私の顔に向けて
「ちょっと奈緒!!あんたまで笑わないでよ!あんなオヤジと一緒よ!?」
「ごめんって。麻衣こそ、箸向けないでよ。」
もう、おなじみの流れである。
私は奈緒、そして彼女が麻衣。私たちはもう小学生のころからこうしてずっと二人でお弁当を囲んでいた。
その中に他の子が入ることもあったけれど、だいたい半年くらいでそういう子たちは別に流れていく。どうやら私たちが固く結びつきすぎているらしかったけれど
憎まれ口を叩かれるわけでもなかったし、何より私たちはお昼にお互いがいればそれでよかったのだ。
高校生に、あがるまでは。
私たちは、幼くて世の中の穢れも知らない純粋無垢な幼女からインドア気味ながらそれなりに元気な小学生時代をすぎ、多感な中学生時代も何とか超えて、高校生になった。
女子高生だ。華の女子高生だとか、青春時代だとか、少女時代の代表みたいに言われるこの世代。
学生の本分は勉強だ。なんていうのは決まって頭の固い大人ばかりで、当の本人たちは女子も男子も頭の中は色恋沙汰でいっぱいだった。
誰と誰が付き合ってるだの、そこのフードコートで誰と誰がデートしてただの、
そんなことばかり。
私はといえば、人からは不思議なほどに無頓着に見えるそうだがそうでもない。
私だって女子高生だ。コイバナに興味がないはずがない。
例えばそう、好きな人がいる。でも私のことを好きな人が別にいる。
分かりやすく言えば、まぁ
”好きな人が、2人いる”とか。
ちなみに、麻衣にも内緒にしたかったけれど、それは難しい相談だった。
私の大好きな、男の子たちの名前だ。
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