Lotus & Moon
naka-motoo
第1話
汚泥に顔をびしゃっ、とつけて、彼女は倒れこんでしまっていた。彼女のこれまでの人生は、そんな風だった。比喩ではなく、本当にドロドロの汚物のような側溝の水面に顔を押し付けられたこともあった。
現実というのは、ありのままにものを観、脚色なしのストレートな意味を捉え、根っこからの解決方法を見つけ出し、さらにはその方法を実行する、というものであるはずだ。僕が、国民的なアニメ映画のいくつかが、究極的には問題を何も解決しないと考えるのは、その部分だ。美的でない、あるいは好意的でない容姿のヒロインは一人もいなかった。老婆を描いたとしても、どこか美的で可愛らしかった。いわゆるいじめや差別や虐待、といったもの、もっと言えば戦争といったものを本気で解決する気持ちがあるのならば、世間一般にはキモい、と言われる容姿の少女をヒロインに据えないといけない。それでは映画は売れない、というのが本音だと思うけれども、僕はそこで思考をストップさせるのは怠慢だと思う。
おとぎ話を超えたリアルから逃げず、なおかつ、美しい映画を作ること。
そうでなければ、本当に夢や希望を持てない人間が、エンターテイメントや芸術で救われることはないだろう。
容姿の美しいヒロインたちで救われるのは、もともと内部に夢や希望を持っている、ありきたりの人たちばかりだ。
僕が彼女に興味を持ったのは、一週間ほど前の、授業と授業の間の休み時間だった。
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