第443話 大阪市浪速区日本橋の熱盛Gingerつけ麺

「急に寒くなったな……」


 仕事を終え、映画を観に向かう道中。12月に入ったからと一気に冷えてきたのを感じる。


 夕食を済ませてから劇場へ赴く予定にしているゆえ、どこで何を喰うかを考えるべきだが。


「限定が、まだあるとは」


 11月限定だったはずのメニューが、まだ残っているという情報を入手していた。身体が温まりそうなメニューだし、迷わず喰らいに向かう。


 日本橋の駅を出て、堺筋沿いに南へ真っ直ぐと進む。最近リニューアルしたチェーンの定食屋と国内でも僅かになった焼き牛丼のチェーンが対角線上にある交差点を越え、中古ゲーム屋やPCパーツ店やマニアックな古書店を越えてしばし歩いてところで右折。


 南海電車の線路に向かってしばし歩いたところに目的の店はあった。


「よし、すぐ入れそうだな」


 ラーメン屋にしてはかなり洒落た木目調の店内へと足を踏み入れ食券機へ。


「まだ残ってるな」


 材料が切れたら次の限定に変わるということだったが、まだ目的のメニューの名前のボタンがある。


 熱盛Gingerつけ麺の食券を確保したところで、店内にカウンターの端の席に案内され、食券を出す。


 SNSでのフォローを示すことで、麺は400グラムになり野菜と脂は増す。受けられる特典は受けよう。


 席に荷物を置き、食券機横からコップを取ってセルフの水を確保し、レンゲと箸とおしぼりも持って戻れば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は、機械王の島の第四章。ラナンとアンゼリカのターンである。リリーというか五悪魔の出番がないが、見習いのはずのアンゼリカの光魔忍法は相変わらず強い。他のキャラの単純な魔力よりも、便利な力である。とシナリオ内容を確認しつつ、おでかけを仕込んだところで、麺上げの気配がする。


 少し待つと、注文の品がやってきた。


「でかい、な」


 ラーメンが入っている丼でつけ汁が出てきて、大盛り用の更に一回り大きな丼で野菜と豚が載った麺が出てきたのだ。とはいえ、つけ麺。麺400gでも大丈夫だろう。


「いただきます」


 麺や野菜よりも先に、どんなもんかとレンゲでつけ汁から頂いてみる。


「おお、こういうの、か」


 茶色く脂の浮いた汁は豚と魚介の出汁を感じるが、一般的なつけ麺の定番の味とは一線を画し生姜の風味と酸味を感じる。刻み玉葱が入っているのもいい。


 野菜をつけて喰らえば、もやしもキャベツもいいゆで加減で甘みが出ているところに生姜の刺激。身体がポカポカしてくる。


 そのまま、太くて固い麺をつけて喰らえば。


「なるほど、熱盛りだ」


 このスープは冷まさず、麺も温かく喰えるのが正解だろう。冷えた体に染みる。


 麺を野菜を生姜の風味で温かくいただく。


 ただただソレで幸福を感じつつも。


 まだだ。


 半分以上を過ぎたところで、


「ニンニクください」


 刻みニンニクを出してもらい、スプーン一杯を麺の方に入れて馴染ませる。


 それをスープに浸して喰えば。


「生姜とニンニクって相性いいよなぁ」


 どちらが勝ということも渾然一体となった刺激が心地良い。そこに大きな塊の豚を浸しておく。


 しばし麺と野菜をニンニクプラスの汁で楽しみ、あるていど味が染みた頃合いを見て豚を贅沢にガブリといく。


「生姜焼き」


 という赴きで肉塊を楽しめる。豚自体は旨みがしっかりしているので生姜とニンニクも負けていないのがいい。


 そのまま、勢いを付けて麺を野菜を喰らっていけば、あっという間に麺の丼は空に。


 生姜スープをレンゲで数杯追い駆けて名残を惜しむが。


 今は、終わりの時。


 水を一杯飲んでリフレッシュして。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻して店を後にする。


「さて、銀河の歴史の一ページを観に行くか」


 ちょうどいい頃合い。劇場へと足を向ける。

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