第439話 大阪市中央区南船場の小ラーメン(野菜マシマシニンニクマシマシアブラカラメアレ)+辛ニラ

「時間は余裕があるな」


 11月1日。映画の日である。ならば、映画を観るしかあるまい。


 仕事を終えた私は、心斎橋の地に降りたっていた。


 働けば、腹が減る。ゆえに、映画の前に腹拵えである。


 地上へ出て、心斎橋筋を劇場とは逆の北へと向かう。今の腹具合なら、ガッツリいけるだろう。


 しばらく進んでダイソーを越えたところで左を見れば、黄色い目立つ看板が見える。


「よし、すぐ入れそうだな」


 店内に入り、食券機へ。小ラーメンと、ちょっと気になった辛ニラの食券を確保して空いていた席へと。


 セルフの水と、ついでに紙エプロンを確保して食券を出せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は、機械王の島イベント第三弾。カトレアとカモミールのターンなので、平和に過ごしている。おでかけを仕込み、軽く出撃して時を過ごせば、


「ニンニク入れますか?」


 詠唱の時間だ。


「野菜マシマシニンニクマシマシアブラカラメアレ」


 サクッと唱えてほどなく。


 注文の品がやってくる。


「ん? ちょっとやり過ぎた、か?」


 大きな丼の上には、山というか中心部が円筒状になった野菜が高く聳え頂点には茶色い粉~魚粉、今日のアレが降りかかり、麓にはそれだけで定食のメインになりそうなデカい豚とたっぷりのニンニク、そして辛ニラが添えられている。


「いただきます」


 何はともあれ、野菜を消費せねばならぬ。


 麓の部分から崩さないように気を付けながら一口。


「おお、優しい味……」


 豚の出汁感が強い、丸い味わいである。これで野菜を食べるだけでも十分旨い。ときおり、魚粉を加えたり、辛ニラでアクセントを加えたり……うん、結構ちゃんと辛くていいな、この辛ニラ。


 しばし、想定以上だった野菜を喰らい、導線が見えて来たところで、レンゲと箸で零さないように注意しながら麺を引っ張り出す。


 スープの色で少し黒みを帯びた黄色い麺を頬張れば。


「やはり、優しい味だ」 ※個人の感想です


 カラメといっても、そこまで醤油が立つような味ではなく豚の出汁が前にくる、そういう味わい。


 続いて豚を喰らえば、


「うんうん、しっかりした豚味」


 タレではなく、塩気で豚の旨みを引き出すタイプの、ハム的な味わい。全体のバランスとしてちょうどいい塩梅。


 量は多いが、これならいける、か。


 天地を返して喰らう。


 野菜を、麺を、豚を。


 が。


「薄まってきた、か」


 塩気のあるスープに大量の野菜の水分が出てしまうのは物理的必然。席にあるカラメを足し、


「いっそこれもいくか」


 白胡椒、黒胡椒、唐辛子。


 ダバダバとぶっかける。


「刺激的でいいな、うん」 ※個人の感想です


 スパイシーにして薄まった分を補い、勢いを付けて喰らう。


 流石に苦しくなってきたが。


「最後は、これだ」


 酢を回し入れる。


「う~ん、爽やか。これならいけるな」 ※個人の感想です


 酸味が全体の味を締めてさっぱり感が増す。


 止まりかけた箸は再び加速し。


「終わり、か」


 気がつけば、丼の中には野菜と脂の破片が浮かぶのみ。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻して店を後にする。


「さて、劇場へ向かうか」


 心斎橋筋を、南下する。

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