第436話 大阪市天王寺区舟橋町の炙り肉そば醤油3辛野菜シングルからあげ1個トッピング+白ご飯中
「寒くなってきたし、辛いもんでも喰って温まるか」
日曜の朝。そんな思いつきで、私は鶴橋駅へとやってきた。
駅を出て信号を渡り、左折。開店直前の時間。少し並んでいるが、これならそう待たずに済むだろう。
店頭におかれたボードに名前を書いて、簡易な椅子に座って待つ。
のだが。
「暑い、な」
しばし遠ざかっていた夏日といっても過言ではない。ジリジリと焼けるような日射し。暖かめの服装でやってきたものだから、とにかく、暑い。
しかも、店舗が南向きのため、日射しを遮るものはなし。
まぁ、待つしかないか。
『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在はハロウィンイベント。学園乙女メインのターンでルベリスステージを地道に進めている。
開店し、最初の客が店内へ。とはいえ、オペレーション的に一気にさばけないためか、3人ずつの案内のようだ。次には入れるだろう。
二回ほど出撃して店頭のメニューを見ていると、順番が回ってきた。
真っ直ぐのカウンターだけの店内の真ん中辺りの席へ。注文は、
「醤油で。野菜シングル、からあげ1個。白ご飯中、あと、辛さは3で」
と通し、後は待つばかり。
再びの出撃である。
目の前の厨房で丁寧に進む調理を視界の隅に捉えながら、三回ほど出撃したところで、麺がゆであがっているのが見えた。
そろそろ、か。
ゴ魔乙を終了し、厨房を見ていると、丼の縁にはみ出すように並べられた肉が、バーナーで炙られている。
続いて、個々の丼にトッピングを載せていき。
注文の品がやってくる。
「中々の見た目だなぁ」
丼の半周ぐらいを占める5枚の炙り肉。その横に並ぶ掌大のからあげ一つ。残りの外周にはブツ切りのネギ。中央には焦がし白髪ねぎ。その下には野菜=茹でたもやしとキャベツ。それらに掛かる紅い粉。
「いただきます」
まずは、スープをいただく。
「おお、これは、絶妙な旨辛だなぁ」
醤油が立ちつつ、甘みを含んだ旨みがしっかりしているのは関西風の味わいだ。それらに遅れてくる辛味。旨みも辛味も存分に味わえる、いい塩梅だ。
緊急事態で仕入れなどが滞った中、完全に独立リニューアルしたということだが、前よりこちらの方がより好みの旨辛だ。元々は山椒も入ったシビカラで席に山椒は用意されているのだが、今日は旨辛で痺れはなしで楽しむか。
引っ張り出して啜る麺は、中太ストレート。しっかり麺肌にスープを纏って旨辛を楽しめる。
炙り肉を一枚取り一口囓れば、単体でご飯のおかずになりそうな味だ。
なので、ご飯に載せて喰らう。迷うことなどない。
旨辛スープをタレとして纏った豚が、米に合わない訳がない。
続いて、からあげだ。そのまま囓れば衣にしっかり味が付いていて旨いのだが、少々脂っこい。これは、スープに加える新たな出汁扱いにするのが個人的には正解だ。
スープに沈め、脂のこってり感が加わったスープを楽しむ。ときおり口に入る焦がしねぎ、ブツ切りネギがいいアクセント。
更に、
「ああ、休まる」
もやしとキャベツは甘みが感じられて、いい箸休めになる。
米を麺を食らい、半分ほどが過ぎたところで、味変を楽しんで行こう。
「まずは、生姜、か」
席に備え付けの容器から、スプーン一杯程度の生姜を放り込み、混ぜる。
「うんうん、さっぱりするな」
生姜のツンとした香りは、唐辛子の辛味とは傾向が異なる。喧嘩もせず、双方の風味が絡んで、爽快感が増す感じであるな。
ずるずると麺をくらい、米を喰らい。肉も喰らう。
しかし、生姜だけというのも味気ない。
「やはり、これもいくか」
刻みニンニクの容器を手に取り、スプーン一杯ほど放り込む。
「ああ、唐辛子とニンニクのマリアージュ……」
この二つの組み合わせが外れるはずがないのだ。アーリオ・オリオ・ペペロンチーノ(ニンニクオイル唐辛子)などという料理が定番として素材するのがその証拠だ。まぁ、唐辛子は水には溶けずらく脂に溶けやすいという性質もあるのでオイルがいるが、それは肉とからあげの脂で補われているだろう。
なんだか一杯の麺の中に盛りだくさんで忙しいが、それだけ楽しめる一杯とも言えよう。
気がつけば、麺は喰らい付くし、残った野菜の切れ端を攫え。その味わいを持って米を食い尽くし。
麺と具材に絡んでほとんど残っていないスープを、攫え。
最後に水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
会計を済ませ店を後にする
「さて、せっかく鶴橋まで出てきたんだから少し散歩してから帰るか」
そう思って店を出たのだが。
「暑い、な」
日射しは変わらず容赦なし。ダラダラと止まらない汗。迂闊に歩くとすぐに脱水しそうな勢いの汗。
ということで。
鶴橋駅へ直行すべく、足を向ける。
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