第423話 大阪市中央区難波のラーメン並
「喰う時間はあるか?」
仕事を定時ダッシュを決め、18時過ぎに上映の映画を観るというミッションに挑む。上手い具合に移動に成功し、上映二十分前に劇場の地下にまで到達。
「腹が、減ったな……」
さっと喰えるものなら、いけるのでは?
前を見れば、さっと喰えそうな麺の店がある。
いくか、いかないか?
悩んでいる時間が勿体ない。
「ラーメン並を」
開けた店内に入り、手を消毒して空いていたカウンターに着いていた。
もう、後には退けない。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在、夏の大型イベントの五乙女のターン。まったり進めるはずが、新しいリリーが来てしまって大変なことに。次の五悪魔のターンもあるが、今も大事だ。
気がつけば、五十位以内には入れていたりするが、出撃する時間はないだろう。おでかけだけを仕込んだところで、早々に注文の品がやってきた。
「うんうん、こういうの」
褐色のスープに、薄切りチャーシュー三枚、刻みネギ、メンマ。オーソドックスな構えである。
「いただきます」
スープを啜れば、旨み甘みが強いこってり感。沈む細麺を引っ張り出せば、しっかりと味を纏っていて、固めのパキッとした食感もまたよし。絡んで来るネギもいい感じだが。
「まだまだ、いける」
麺と一緒に出てきた容器を空ければ、たっぷりの刻みネギ。この店はネギが入れ放題なのである。
たっぷりと載せて、喰らう。
こってりしたスープにネギの食感と香りがいいのだ。薄切りチャーシューも素朴でよい。
するすると喰らうが、まだ足りない。
半分ほど食べたところで、味変の時間だ。
「これも、いくか」
席におかれた容器から、紅いペーストをスプーン一杯スープに放り込む。一気に広がる朱。スープに宿る唐辛子とニンニクの風味。そう、これはニンニクを練り込んだ唐辛子ペーストなのである。
「更に追加」
刻みニンニクの小袋を一つ追加。
「これもまたよし」
甘み旨みに辛味がガッツリ加わって、食欲がブーストされる。
麺をズルズルと喰らい、ネギを足しつつメンマの食感を楽しみチャーシューを喰らう。
汗が滲んでくるのが心地良い。
麺が残り少なくなってくると、頭の中に『替え玉』という言葉が浮かんでくる。
確かに、このスープならまだ一玉ぐらいなら受け入れ可能だろう。
だが、今はやめておこう。
ゆであがるのを待つのが少々リスキーだ。
サクッと麺を喰らい付くし。
レンゲでスープを追い駆ける。
追い駆ける。
気がつけば、もう残り僅か。
最後の最後は丼を傾けて飲み干し。
水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
会計を済ませて店を後にし。
「上映まで十分を切ってるが……まぁ、間に合うだろう」
劇場へと、足を向ける。
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